⑤価格の低下

 競争によって、価格の低下が進む。デジタル家電の価格がどんどん安くなる事と、電気料金が下がらないのは、競争の有無で説明できた。しかし2016年からは、発電、送電、小売りが分離され、新規参入業者も増え、電気料金は下がる可能性が出てきた。

 一方で競争にはデメリットもあり、顧客不在、利益の喪失、組織疲弊などがあげられる。

①顧客志向から競争志向に

 競争志向が強くなりすぎると、顧客志向が犠牲になる。競合他社を中心に考えるあまり、顧客リレーションシップの維持がおろそかになるからである。コトラーらは、顧客も競争も重視する「市場志向」を目指すことの重要性を唱えている(図表1参照)。

 

写真を拡大
図表1
②価格の必要以上の下落

 価格の低下は顧客にとっては望ましい。しかし、企業にとっては経験曲線によるコスト低下を上回る価格低下になると、利益を減らしていくことになる。かつての薄型テレビの競争は、いくら売っても利益の出ない競争になってしまった。

③組織の疲弊

 同質的競争は組織の疲弊を招く。他社と同じことをするためには、常に競合他社の動向をウォッチしておかなくてはならない。また、資源やコスト構造が変わらないとすれば、他社より長時間働くか、利益を削って他社より安く販売するしかない。その結果、常に尻を叩かれ、人も組織も疲弊していく。

競争しないことが利益率を高める

 競争がもたらすデメリットの影響もあり、日本企業は利益率を下げてきた。例えば法人企業統計調査によれば、日本企業は30年前には平均約5%あった売上高営業利益率を下げ続け、未だその水準に戻っていない。

 しかし、利益なくして企業は存続しない。本連載では、「できるだけ競争しない状態が企業に収益をもたらす」という前提から、どのようにその状態を作っていけばよいのかを明らかにする。ただし競争が全くゼロになるという事は現実にはありえない。本稿における『競争しない』とは、「既存の業界リーダー企業と戦わないこと」と定義し、生業的な会社(例:街の個人商店)や、同じビジネスモデルの企業とは競争する場合もある。