3.社会的価値と経済的価値の創造
 生成的な企業のビジネスモデルは、経済的価値と社会的価値の両方を創造するように設計されている。小規模事業者に資金を融資するコミュニティ・ソースト・キャピタル(CSC)は、大勢の投資家から小口の投資金を集め、通常の融資制度を利用できない事業者に資金を提供して経済的価値を創造している。同時に、投資家と借り手の関係がコミュニティの絆を強化する仕組みになっている。投資家には「自分が住みたくなるような世界に投資する」機会を提供し、借り手にはその事業目的を支持する顧客や近隣地域の投資家を紹介する。それが地域経済の活性化につながり、起業家や革新的な事業アイデアは支援を得られる。CSCの金融取引を中心として生まれる社会的価値は新たな支援者と機会を呼び込み、個々の事業はより大きなインパクトを追求できるようになる。参加者コミュニティの価値創造に注力した結果、CSCはシアトルから全米5カ所に事業を拡大、わずか1年間で350%の成長を遂げた。

 マンハッタンのコワーキング・スペースであるニューワークシティー(NewWorkCity)も、経済的価値と社会的価値の両方を創造するビジネスモデルを築いている。その収入源は、小規模事業者へのデスクやWi-Fi、会議室のレンタルだ。ただし借り手である事業者には、手頃な価格で都心部に仕事場を得る以上のメリットがある。ニューワークシティーはオフィス空間のレイアウトや人的交流の方法を工夫したり、イベントを企画したりと、利用者に有益なコミュニティを提供している。そこでは人々が非公式に情報交換し、学び合い、自分のアイデアを試し、励まし合える。予期せぬ出会いが、セレンディピティ(思いがけない幸運な発見)とコラボレーションを誘発する。

 ニューワークシティーとCSCの例を見ると、生成的な事業とは必ずしも、デジタルのプラットフォームやオンラインの製品に頼る必要はないものだと気づかされる。物理的空間のレンタルや資金融資といったアナログな活動も、基本的な経済取引の枠を超えて、他社の成長を促進するという社会的価値を創造できるのだ。

 生成的なビジネス手法は、企業の社会的責任(CSR)や社会起業、共通価値の戦略(CSV)などの核となるべきものだ。この手法は、企業が「恩送り」(恩を受けたら、他の誰かに恩を送ること)の姿勢を持ち、ネットワークの中で寛大な存在になるよう促している。それは新たな施策として導入するものではなく、根本から方向性を変えるということだ。

 バッファーやエッツィー、CSC、ニューワークシティーのような生成的な企業は、衝突を抑制し、学習を促進し、ステークホルダーと共に価値創造の幅を広げている。こうした取り組みにより、企業は自社の成長のみならず、ビジネスのパイ全体の成長に貢献できるのだ。

※generativityに関するより詳細な説明(英語)はこちら


HBR.ORG原文:The Benefits of Giving Away What Your Company Knows October 14, 2014

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CV・ハークエル(CV Harquail)
組織改革とデジタルテクノロジーの研究者。スティーブンス工科大学で経営学の講師を務め、オーセンティック・オーガニゼーションズのコンサルタントとしても活躍する。