戦略のパートナー、変革の擁護者
としての人事部門

 いま、人事部門に求められる役割は極めて大きい。ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授は、人事の四つの役割を提唱している。

 第一に、サービスプロバイダー。人事制度に基づいて管理を行い、従業員にサービスを提供する部門としての側面である。第二に、従業員の擁護者。従業員の声をつぶさに聞いて、問題があれば解決を図る。以上の二つは、人事部門の伝統的な仕事といえるだろう。

 第三に、ビジネスパートナー。企業の戦略の達成に向けて、人事・組織面からサポートする。戦略を実行するためには、どのようなスキルを持つ人材が必要か。その人材は足りているのか、不足しているのか。社内で調達できないとすれば、どのようにリクルーティングすべきか。こうした一連の取り組みが人事部門に求められる。

 第四に、変革の擁護者。たとえば、事業のグローバル化が必要だとすれば、評価や報酬を含めた人事制度の見直しは欠かせないはずだ。人事部門は新しい制度の設計を通じて、変革をサポートする。

 第一と第二の役割は、人事のいわばメンテナンス業務である。難易度が高いのは、いうまでもなく第三、第四の仕事だ。

 P&GやGEのようなグローバル企業の人事部門は、すでに第三、第四の領域に足を踏み入れ成果を上げている。本シリーズで既述したが、私自身が深くコミットしたP&Gジャパンの変革はその一例にすぎない。

 日本企業の人事部門のほとんどは、いまも第一、第二のエリアにとどまっている。それで競争に勝てるなら、私が言うべきことは何もない。しかし、競争のフィールドが世界に広がったいま、メンテナンスだけの人事部門を持つ日本企業が、グローバルプレーヤーに伍して戦えるとは思えない。

 以上、日本企業の経営者と人事部門に対して厳しい意見を述べたが、そこには大きなチャンスがあることも付言しておきたい。つまり、経営者や人事部門が変われば、日本企業が変わるということだ。改めていうまでもなく、技術開発や生産革新、優れたサービスなどの現場力において、日本企業はいまも世界のトップランナーの位置を占めている。

 本社の数フロアに陣取る人たちが変われば、企業全体が変わる。次回は、ビジネスのパートナー、あるいは変革の擁護者としての人事部門の役割について、さらに深掘りして考えてみたい。