自前主義を捨てる。もはや一社では勝てない

 本書の特徴は、オープンイノベーションの概念を提唱するだけに終わっておらず、どのようにすれば企業が導入できるのかを丁寧に解説しているところです。しかも、(書名と違って)教科書的な記述ではなく、きわめて現実的に。

 本書では、自社にない技術を探すプロセスを、①技術の選定、②技術の探索、③技術の評価、④実際の導入という4つの段階にわけています。「技術の評価」の段階では、他社から集まった複数の技術を検討するのに「4週間以内に意思決定せよ」とまで書かれています。評価に時間は必要ですが、これ以上引き延ばすことにより相手企業との信頼関係が悪化するデメリットが明記されているのです。

 その上で、不採用の場合どのように断るのかが、注意点とともに丁寧に解説されています。きちんと誠意をもって断ることで、その後の関係性が決まると言います。実務でオープンイノベーションを重ねてきた著者の経験が、文中の至るところににじみ出ています。

 著者の星野達也氏は、日本のメーカーで鉱山技術者としてキャリアをスタートさせた後、マッキンゼーに転身し経営コンサルタントに。製造業への関心と熱意から2006年に、オープンイノベーション支援の専門会社、ナインシグマの日本での立ち上げに参画。これまで100社を超えるオープンイノベーションを支援してこられました。論旨明確な構成で本書の至るところに、大企業が組織として実践するための具体的なアドバイスが溢れているのも、著者の経歴の賜物でしょう。

 最後に本書を読むと、オープンイノベーションは技術力のある大企業の活用するものという認識が狭いことがよくわかります。他社から技術を取り入れるのは大企業が多いでしょうが、自社の技術を提供するのは、中小企業であり、大学の研究室であり、スタートアップ企業でもあります。大企業が技術を外部から調達する手法が一般化すると、これら固有の技術をもつ小さな企業の活躍する道筋が広がります。それ自体では製品化できない技術も新たな価値となりますし、それを持つスタートアップ企業が早期にマネタイズする可能性も広がるのです。

 本書を読むと、複数の企業が集まるとよりイノベーションの可能性が高まるという当たり前の事実を再認識できます。自ら多くの技術を身につける必要はない。特異な技術をさらに磨きこむ。そのような企業が大小関係なく複数集まることで大きなイノベーションが生まれます。そして、その音頭を取るのはどの企業か。リーダーシップを発揮し自ら動く企業が現れることこそ、日本の製造業復活のカギでしょう。

 本書は閉塞感を感じている製造業の人にはもちろん、新しい事業の開発を目指すすべての人にも是非読んでみていただきたい。日本で革新的な事業をつくる際のバイブルとも言える一冊です。(編集長・岩佐文夫)