個々の従業員に決まった席は割り当てられておらず、200名の人員に対し作業用の席は150しかない。自分の席がなくなることに当初難色を示した人に対し、カタラーノは「これまでの仕事場が有効利用されていなかったという実データを示すと、議論の余地はなくなった」と言う。従業員は私物をロッカーに入れ、毎朝好きな場所で仕事を始める。各机には除菌ウェットシートが置かれ、共有するワークステーションが清潔に保たれるようにしている。空間全体が環境に配慮した設計となっており、職場の使用状況や空間に差し込む日光の量などの条件に応じて、ブラインド、照明、室温が変化するようプログラムされている。

 仕事場がどんなに素晴らしくなっても、慣れ親しんだ習慣はそう簡単に変わらない。シティのインクルージョン・プログラムおよびワークライフ・ストラテジーズ責任者のキャリン・ライカーマンも、「どこに座るかは完全に自由なのに、私は毎日たいてい同じ場所に座ってしまうし、他の人たちもほとんどがそうしている」と認める。

 広い空間は、色分けされたネイバーフッドで区切られているため、従業員に帰属感を与え、健全な一体感を育んでいる。

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(左上から時計回り:グローバル・ダイバーシティ、学習・能力開発、人材マネジメント、報酬、グローバル・エクイティ/人事共有サービス、グローバル人事異動、福利厚生、新卒の採用・プログラム管理)

 

 仕事場をオープンな空間にすることの最大のメリットの1つは、イノベーションである。従業員はかつての職場なら知り合うことのなかった人と話ができるようになったため、新しいアイデアを思いつく可能性が高まる。ライカーマンは以下のような実例を語ってくれた。

「インクルージョン(多様性推進)のチームに新たに加わったある従業員は、自分の主な仕事は差別是正に関する報告・監査だと考えていました。ところが、フロアの反対側に座っていた採用チームの人間と会話を交わしたことで、従業員のネットワークを活用して多様性を考慮した採用活動を行う方法について考えをめぐらすようになりました。その後、彼は我が社のネットワークを監督する私のもとへ相談にやってきました。そして私たちは、ネットワークをもっと活用する、画期的かつ組織的な採用アプローチを新たに策定できたのです」

 もう1つのメリットは、楽しさと仲間意識が増したことである。新たなレイアウトに変更した後は、ランチの時間を一緒に過ごす人々が増え、席で1人で昼食をとる人は減った。それぞれのネイバーフッドでは、朝食会や金曜午後の親睦会といった、非公式な楽しいイベントが企画されるようになった。「何年も同じ仕事をしているのに、直接話したことがない人たちが大勢いました。いまでは雑談レベルで接する機会もあって、楽しいですよ」とライカーマンは言う。また、仕事場が集約されたことで、シティ人事部の予算は数百万ドル節約されている。