分析の結果から、ある特定の人たちがほぼ全員と話をしていることがわかった。そしてこれらの「非公式なエキスパート」と話をした人は、その後いつもの約3分の1の時間で仕事を完了した。仕事のコツを伝授してもらったからだ。

 非公式なエキスパートたちが他の従業員に教えた結果、チームの作業時間は1カ月間で約265時間減った。ただし、他の従業員を助けたために、エキスパート自身の生産性は数値上は人並みにとどまった。個人の生産性に基づいて報酬額が決まるシステムの下では、彼らの報酬額は教えた相手よりも低かったのである。

 組織にとって、これは理にかなっていない。このようなインセンティブの下では、誰もが各々の生産性に執心し、集団の生産性が抑制されてしまう。組織に最も貢献した非公式なエキスパートは、チームのパフォーマンスを向上させたのに報酬減額という不利益を被るのだ。

 残念ながら、ありがちな話である。従業員は、自身の生産性向上に関して常にプレッシャーを感じている。それを基準に評価され、報酬額が決まるからだ。個人の成果のみを重視するインセンティブの下では、大局的な視点が失われる。共通の目標に向かって一丸となって取り組むには、何にも増してコミュニケーションが必須なのだ。にもかかわらず、コミュニケーションによる貢献は見過ごされ、正当に評価されていない。

 この事態を変える最善の第一歩は、金銭的インセンティブを見直すことだ。積極的な交流行動に対して報酬を与え、チーム目標と連動した賞与を設けるとよい。会社全体の成功に向けて情報を共有し、一致団結して取り組むことを奨励するためだ。

 しかし、それだけでは効果がない。共有とコミュニケーションの価値がないがしろにされるような企業文化の下では、金銭的インセンティブでも奏功しない。昼休みの時間が長かった従業員を上司が叱責するようでは、事態は変わらない。他者を積極的に支援する人を昇進させず、個人プレーに脚光を当てるような会社も同じだ。共有の精神、人々のつながり、そしてコミュニケーションを、企業のDNAに取り入れる必要がある。

 だから、従業員どうしでランチに出かけるよう勧めるとよい。コーヒーブレイクを誰かと過ごすこと、仕事中に同じテーブルを囲むことを奨励しよう。職場での人々の交流は、許容ではなく必要とされるべきものだ。私たちが会社で働くのはつまるところ、1人ではできないことを他者と協力してできるからである。同僚を助けることは、当然の行為とされなくてはならない。結局それが、自分自身の成功につながる唯一の道なのだ。


HBR.ORG原文:Give Your Unsung Office Heroes a Raise September 23, 2014

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ベン・ウェイバー(Ben Waber)
経営コンサルティング会社ソシオメトリック・ソリューションズの社長兼CEO。MITメディアラボの客員研究員も務める。