新興国経済はベンチャー
呼吸を合わせられるのはベンチャーだけ

石倉 徳重さんは、二輪や四輪のメーカーに勤めていたわけではなく、EVバイク事業をゼロから起ち上げています。しかもアジア市場でのビジネスの経験があるわけでもありません。それなのに、恐れることもなく、信念を持ってアジア市場に切り込んでいる。これは、どんな思いがあってのことなのですか。

徳重 日本でもベンチャー企業は出てきていますが、年商が2~3億円ぐらいで「上がり!」となってしまうケースが多 く、グローバルに事業を築いていこうとする担い手は少ないですね。しかし、私はシリコンバレーでの経験から、起業するならメガベンチャーを目指すべきだと いう信念を持ちました。そして、社会性のある仕事をグローバルに展開したいという気持ちが根本にあります。
 新興国とは、すなわちベンチャー国だと考えています。そう考えると、グローバルに事業を興したいと考えている我々とは、決断のスピード感や相性がよく、すごく馬が合う。しかもアジアに行くと、日本人はすごく尊敬されるのです。なぜかといえば、先ほど言ったように、現地で苦労してきた日本人の姿を高く評価してくれていて、日本人や日本の会社が大好きなんです。「日本人は信頼できる、噓つかないから協力できる」と言ってくれる。

石倉 日本への信頼は、ビジネスを展開する上での無形資産といってよいですね。

徳重 しかしそれだけに頼っているわけではありません。私も最初は、ジェトロや都銀の現地支店にアドバイスを求めたりしますが、その後は、リンクトインやフェイスブックなどからローカル財閥や自動車ディーラーのキーマンを探し出して、恥も外聞もなく交渉を持ちかけます。1日4~5件のアポを取り、1週間で20~30社を回ります。事前に相手のことを調べてから会い、二度三度と訪ねると相手も(こちらの真剣さが)分かりますよ。そして、「今どきこんな日本人がいたのか」とものすごく感激してくれます。大手企業の駐在員は、ハイヤーで動き、メイドを雇った暮らしをして、遊びはゴルフという人が多い。ですから、ローカルの人が乗る安い三輪タクシーに乗って私が現れると、ものすごくビックリされます。

石倉 ベンチャー企業だからこそ、新興国の人たちと息が合うんですね。もちろん、環境の変化は早いですから。不確実性や曖昧さはあるでしょうが。

徳重 そうです。新興国の財閥や大企業も意思決定は即断即決ですから、現在の彼らに的確に対応できるのは、僕らのようなベンチャーです。こういう人たちと交渉したり、連携したりという取り組みを2年間ぐらいやってきて相当鍛えられました。私自身、日本には1カ月のうち1週間もいませんし、当社はまだ売上高は数億円で、日本国内での地位は高くありませんが、日本に対する現地の信頼をベースに、このビジネスのポテンシャルを評価してもらえているのです。

石倉 日本には起業したいとは思っていても、本当にビッグ・ビジネスをやろうと試みている人は少ないですね。

徳重 アジアだ、新興国だ、海外だなどと掛け声は大きいのですが、本当にやろうとしている人がいない。これは重大な問題だと思います。