また、日本企業は欧米企業と比較すると、必ずしもトップダウンが強くはない経営スタイルであり、ミドルマネージャーが実際の実務だけでなく意思決定まで任されている。ある意味、トップの意思決定をもコントロールしているケースは少なくないため、鍵となるミドルマネージャーのイニシアチブに対する腹落ち感が不可欠である。各現場で、「この人が言うならやろう」という改革への機運をつくっていくうえで、ミドルマネージャーが中核的な役割を果たすのである。

(3)企業文化の改革

 ベインの調査によると、トップパフォーマーは概ね平均の約4倍の成果をあげる(第2回参照)。また、同じ能力を持ったひとりの人材でも、その時々のモチベーション次第で生産性が2-3割程度は異なっていることも、ベインの経験則上明らかになっている。

 では、従業員のモチベーションを高め生産性を向上させるために、経営として何を行うべきか? 特に日本人の場合、昇進・昇格や、給与・ボーナスアップだけでは人の心は動かないケースが多いのではないだろうか。高い生産性で仕事を遂行し、高業績を上げる企業であり続けるための、企業文化を醸成することが必要なのである。

 ただし、「企業文化を変えよう」と号令をかけて企業文化が変わるようなことは起こりえない。日々の小さなことから地道に変えていくしかない。例えば、第5回にご紹介した会議の生産性向上の4つのポイントにあるように、号令をかけるだけではなく、具体的なアクションがしっかり遵守されているかを緻密にKPI化し、モニタリングする活動が不可欠である。ある程度強制力を持って日々の行動を変えてもらう。行動が変われば、次第に意識が変わってくる。それを長期間持続できて初めて企業文化として定着し、従業員一人ひとりの価値観となって企業のベクトルがそろっていくものなのである。

生産性向上の真の目的は、コスト削減ではない

 生産性向上は、目先のコスト削減やリストラを目的に行うものではない。仕事のやり方から複雑性を取り除き、シンプルなものにデザインし直すことで、顧客に対して真に価値を提供する業務に集中できる環境を整えるために行うものである。

 顧客に真の価値を提供すれば、顧客の企業に対するロイヤルティは向上する。ロイヤルティの高い顧客に対して価値を提供していることを実感すれば、従業員一人ひとりの仕事や会社に対する帰属意識も向上する。人は誰でも、「自分を必要とし、高く評価してくれる人のために役に立とう」と思って仕事する方が、気持ちが鼓舞され高い生産性で働けるのは当然であろう。

 顧客と従業員双方のロイヤルティの向上が、結果的に企業の持続的な利益成長につながる。この好循環を実現することが、生産性向上の真の目的なのである。

(了)


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