チャーリーと知り合ったのは、我々の製品についてIBMが問い合わせをしてきた時だ。その後数回の打ち合わせを経て、私はチャーリーがゾーンラボとIBMをつなぐ推進者になると確信した。まず信用の点で、彼はIBMで25年も勤務しているベテランであり、一定の評価を受けていた。人脈も豊富で、IBMという組織がどう機能するのかを心得ており、組織内で非常に多くの人々を知っていた。なおかつ、内部事情にも精通していた。IBMがセキュリティ関連製品を翌年に導入する予定で、現在は製品を選定中であることを教えてくれた。その候補リストは既存の有力企業の看板製品で占められていた。

 信用と人脈、社内情報は、望ましい推進者が持っていなくてはならない最低条件だ。では、こちら側はこれらの特性を有する推進者の関心をどのように引きつけ、歩調を合わせればよいのだろうか。そのカギとなるのが、4番目に挙げた「動機」である。

 ゾーンラボはビッグネームとの取引を必要としていた。市場での信頼を確立し、業界でおなじみの顔ぶれを脅かす有力な代替者になるためだ。しかしチャーリーは何を求めていたのだろうか。推進者の動機を特定するのは容易ではないが、必要不可欠である。なぜなら人間性への理解は、交渉の核となる要素だからだ。多くの場合、資金面やビジネスの原理よりも人間的な要素のほうが、より強く交渉に影響を及ぼす。

 私が接してきたチャーリーを含む多くの推進者たちは、さまざまな目的に駆り立てられている(複数の動機を持つ者も多い)。それらは、おおむね次の5つに集約できるだろう。

●イノベーション
 特定の分野にしっかり焦点を合わせ、明確なビジョンを持つ推進者がいる。彼らは探求と実験を好み、新たな領域を開拓したがっている。私はこのタイプを「ドリーマー」と呼んでいる。進歩と探求を動機としているからだ。

●業界での優位性
 業界内における自社のポジションを向上させたい者もいる。彼らはまるで「ライオン」だ。自社の競争優位を強化し、最新のトレンドや市場において支配的な地位に立とうと果敢に狙っている。

●キャリアの前進
 このタイプの推進者は、自分のキャリアを向上させようと必死で努力する。言わば「クライマー」のように高みを目指し、組織内での自分の地位を固める機会、あるいはライバルや他部署に差をつける機会を探し求めている。

●尊敬
 熟練のプロフェッショナルでありながら、組織内で自分の実力が生かされていないと感じている人々が推進者になることは多い。彼らは報われなくても組織に忠誠を尽くす「ロイヤリスト」といえる。企業の核であり、ノウハウを重宝されてはいるが十分な称賛を得ていない。彼らの動機はステータスだ。自分の経験と貢献を評価してもらいたい、周囲の関心を得たいと願っている。

●秩序
 その他、非常に多くの推進者はただ数字を重視する。『スター・トレック』に出てくる厳格な「バルカン人」のように、理論や証拠、コンセプトの実証を求める。