2000年代初頭、家電大手ベスト・バイのジュリー・ギルバートは、女性リーダーの育成を目指す社内ネットワークを率いていた。当時のベスト・バイは競合他社と同じように、家電製品の販売を男性目線で行う傾向が強かった。ギルバートはこの状況を変えようと決意し、前述のグループに女性客への働きかけを促した。より女性に優しい家電販売を実現すべく女性客の協力を取りつけるために、顧客の緩やかなつながりでしかなかったネットワークにコミュニティの要素をいくつか採り入れた。すると、ネットワークにいた人々は喜んでフォーカス・グループに参加し、ギルバートのグループと協力して新しいプログラムや店舗デザインを考えてくれるようになった。この改革によってベスト・バイの売上げが伸びただけでなく、女性客からの返品率も改善された。

 2008年にファイザーは、法律関連の協力を社外に求めていたが、効率が悪くコストも高くついていた。この事例を調査したハーバード・ビジネススクール教授のリンダ・ヒルらによれば、当時同社は、医薬品開発とマーケティングにおける技術的・倫理的な課題に際して専門家の知識を必要としていた。しかし、同社が使っていた複数の法律事務所は互いに協力するどころか、情報共有さえしていなかった。そこで、新任の最高顧問弁護士エイミー・シュルマンは各法律事務所に対し、目前の関心事にとらわれず事務所の枠を超えて協力するよう促した。互いに学び合い、全体としてより優れたソリューションを提供してもらうためだ。

 こうして「ファイザー・リーガル・アライアンス」が発足、参加した19の法律事務所は、時間単位の請求から1年当たりの定額制に切り換えることで同意した。この新しい仕組みによって事務所間の協力が促され、ガバナンス・モデルの共有により共通理解が進んだ。オンラインのコミュニケーション・プラットフォームも新設されて事務所間の連絡が容易になった。こうした改革によって、ファイザーを含めすべての当事者がメリットを享受することになったのである。各法律事務所の参加は以前と同じくファイザーの支払いに依存していたが、法律の専門家たちが共通目的に向けて協力することがなければ、この協定が大きな成果を上げることはなかっただろう。

 ネットワークをコミュニティへと発展させるために、リーダーは何をすべきだろう。第一に、正式な権限の有無にかかわらず、参加者を積極的に導くことが求められる。「薄い我々」レベルのネットワークなら、放っておいても勝手にまとまっているかもしれない。しかし持続的なコミュニティを築き大きな目標に向けて団結させるには、指導と育成をしっかり行う必要がある。コミュニティの構築に長けたリーダーは、大きな目的を前面に打ち出し、高次のビジョンに向けて人々が挑戦するよう仕向ける。

 第二に、人々を鼓舞するメッセージを発しながらも、パフォーマンスを高めるための現実的な視点を持つ必要がある。それができるリーダーは、測定可能な成果が集団で達成されるよう人々をまとめるだけでなく、活動の過程で個々人に直接的なメリットがもたらされるよう工夫もする。たとえば新たな専門的スキルの習得や人脈の構築、そしてグループの一員として協働することで得られる社会的な充実感などだ。

 第三に、最も重要なことだが、参加者を真のヒーローにすることである。そのためには、参加者に目的達成への責任をしっかりと担わせることだ。彼らは責任を感じれば感じるほど、エネルギーと意欲を発揮し、参加すること自体に喜びを感じてくれる。重要な何かのために自分が強く必要とされている――この感覚ほど、人のモチベ―ションを高めるものはない。

 経済のネットワーク化がますます進むなかで、次世代リーダーの役割は人々を監督することではなく、結集させることへと変わっていくだろう。そうしたリーダーは、自分の役割を「私」ではなく「我々」という単位で考え、そのつながりがより濃いほど望ましいことを心得ているはずだ。


HBR.ORG原文:You Need a Community, Not a Network September 15, 2014

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ブルック・マンビル(Brook Manville)
組織開発を専門とするコンサルタント。共著に『ジャッジメントコール』(日経BP社)、A Company of Citizens(Harvard Business Review Press)がある。