2.役割分担を柔軟にする
 何十年もの間サッカーチームは、ゴールキーパー、ディフェンダー、ミッドフィルダー、そしてフォワードによる明確な陣形を用いていた。多くのチームはいまでもそうしているが、ここ5年ほどの間により流動的なフォーメーションも一般的になり、サイドバックがしばしば攻撃を仕掛けたり、フォワードがディフェンスの最前線を形成したりするようになった。選手たちがポジションを変える頻度も増している。右ウイングが突然左ウイングに変わったり、ベテランのディフェンダーがしばらく中盤に上がっていたりする。このような変則的でフィールドを広く使うオープンなシステムによって変化に富むやり取りが可能になり、対戦相手にとっては動きが読みにくくなる。

 対照的に、企業社会では開放性と協力はそれほど見られない。競争による絶え間ないプレッシャーの下、企業は外よりも内側を見つめ、利己的な活動に従事し、非難の矛先を他者に向ける。生産・設計部門は、高品質の自社製品をマーケティング・販売部門が十分に売ってくれないと文句を言い、後者は前者を非難する。この自己中心的な精神構造はサッカー界でもいまなお見られるが、以前ほどは蔓延していない。そして賢明な監督であればけっして許容しない。企業のマネジャーたちは、ライバルはあくまで他社であり、廊下の向こうにいる同僚たちではないことに気づく必要がある。

3.マネジャーは管理者ではなく教師であれ
 かつてサッカーの監督は、フェリックス・マガトやルイ・ファン・ハールのように、規律と服従こそが正しいと信じていた。彼らは何をどのように成すべきかを常に把握しており、人間関係の類をすべて邪魔だと見なす。このようなリーダーシップのスタイルは、ライバルよりも常に1歩先んじている時、そしてチームにとって何がベストであるかを把握している時に限って有効だ。また、危機にある時にも適切かもしれない。だが競争が激しさを増し、変化が急速で、かつ複雑な環境では、選手たちは自分の頭で考えなくてはならない。

 今日における最良の監督は、むしろ探検隊のリーダーに近い。選手たちを教育的に導き、相互に支え合う旅をしている。このグループに属する指導者はペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、トーマス・トゥヘルをはじめ、チームワークこそが大切だと信じる者たちだ。バイエルン・ミュンヘンの監督グアルディオラは、チームの成果をどんなに誇りに思っているかを常に口にする。ボルシア・ドルトムントの監督ユルゲン・クロップは、選手たちがかつて経験したことがないほどのサポートを彼らに提供すると誓っている。そしてシャルケの監督イェンス・ケラーは、選手たちが目の前で成長していく姿を見ることに快感を覚えるという。

 悲しいことに企業社会では、保守的な幹部がいまなお健在だ。アメとムチの血の通わないマネジメント手法に頼り、それに対する社員の不満や反発に気づこうとしない。プロサッカー界は、多くの選手が若いという理由もあって、この教訓をとうの昔に学んだ。「自分のスタイルはマガト流か、それともグアルディオラ流か」――CEOたちはそう自問すべきだろう。