●群知能の重要性

 群知能と聞くと、ミツバチの群れが巣で共に働いているイメージが連想される。行動生物学者のイェンス・クラウスによれば、人間が群知能を発揮するには、まず個々人が自主的に情報を収集し、その情報を他者との交流を通して処理・統合し、その成果を認知的問題の解決に利用することだ。このやり方が他のシステムより優れている点は、群れを率いてその行動に影響を与える機会を個々人が持てることだ。そして集団での行動によって、より多くの要因を考慮し、より多くの解決策を考え出し、より優れた意思決定を行うことが可能になる。

 競争が熾烈な今日の経済下で生き残りたい企業は、ライバルよりも常に1歩先んじるために努力を続けなければならない。それにはリーダーの持つ資源だけでは不可能であり、周囲の集合知を総動員することが求められる。たとえばドイツのBMWは、集団の英知を利用するために共創研究所(Co-Creation Lab)を設置し、一般の人々がアイデアを寄せ貢献できるようにしている。特に目を引く取り組みとして、同社は交通の未来についての提案を募り、電気自動車への新たなアプローチや、駐車、車間コミュニケーションなどを含む300を超えるアイデアを検討している。

 群知能のメリットを享受したい企業は、最も明白かつ最大の源泉、すなわち社員たちの活用から始めるべきだ。製品、サービス、プロセスを改善するために、全社員の集合知を利用するよう努力しなければならない。社内ウィキやその他の電子プラットフォームは、アイデアを交換する素晴らしい場になりうるが、群知能はデジタル・メディアやクラウドベースのプロジェクトに限定されるべきではない。経営幹部は群知能を単に「オンライン上の協力形態」と見なすことをやめるべきだ。社員たちから最良のアイデアを引き出すこと、そして生み出された群知能を基に、複雑な戦略上の課題に解決策を見出すこと――これらをいかに行うかが重要なのだ。

●「ティキ・タカ」サッカーから群知能を学ぶ

 企業は群知能の活用について、ティキ・タカ・スタイルを採用しているサッカーチームから以下の5つの教訓を学べる。

1.共通のビジョンを確立する
 サッカー界では数年前まで、ビジョンなるものは曖昧であるとして軽視されてきたが、いまでは次第に受け入れられている。監督はシーズンの開幕時に選手たちと集い、達成したいことを決める。シーズンの終わりにどう感じていたいか、何に誇りを感じるか、感情面にも焦点を当てながら話し合う。チームの目標は単に勝つことだけではなく、ファンを興奮させるような魅力的なプレーをすること、チャンピオンズリーグへの出場資格を得ること、できるだけ多くの選手をワールドカップに送り出すこと、地元の子どもたちがチームを誇りに思うようになること、等々がある。クラブのミッション・ステートメントには「誇り」「情熱」「選手育成」といった言葉が記載されることも多い。

 あなたが会社の部門長で、組織の規模が現代のサッカーチームと同程度であれば、部下と共に共通のビジョンを策定することはそれほど難しくないはずだ。だが複数の調査によれば、部長クラスのマネジャーのうち、部下を導くために部門レベルのビジョンを策定している者の割合は1割にも満たない。彼らは大抵、「必要なのは、全社的なビジョンを策定して全社員に浸透させることだ」と主張する。全社共通の楽譜を見ながら歌うことは有益だが、部門レベルでのビジョンは社員たちに目的意識と方向性を持たせるものだ。そしてビジョンを目指す過程で部門の群知能が発揮されやすくなる。