アマゾン創業者ジェフ・ベゾスと会話を交わしたことはないが、私は2度メールを送っている。出版業界では知られているが、アマゾンとの間で大きなトラブルを抱えている著述家には、ベゾスに直接メールを送るという最終手段がある(英語記事。彼のアドレスに顧客がクレームを送ると、ベゾスが「?」を付けて関連部署に転送し、担当者は大慌てで対処するという)。私の経験からすると、読者もまた、同じ方法ですぐに対処されるはずである。

 コールド・メールを実行しているのは私だけではない。現在スターバックスの最高コミュニティ責任者を務めるブレア・テイラーは、CEOのハワード・シュルツに送ったコールド・メールがきっかけでこの職に就いている。アフリカ系アメリカ人およびマイノリティを支援する非営利団体、ロサンゼルス・アーバン・リーグの会長だったテイラーは、シュルツにメールを送ったことがきっかけで電話で話すことになり、やがて仕事のオファーへとつながった。

 ベストセラー『GIVE & TAKE』を著したペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授のアダム・グラントは、コールド・メールに頻繁に返信している(英語記事)。ただしメールの内容が有意義であり、人を利用すること(taking)ばかりでなく与える(giving)精神をもって書かれている場合に限られる(ギブ&テイクによる助け合いは彼の研究テーマ)。

 20年以上にわたってピクサーに勤務したクレイグ・グッドは、同社の警備員として働き始めたが、退社する時にはテクニカルチームの一員として伝説的な存在になっていた。彼はスティーブ・ジョブズにいきなりメールを送った時のことを、次のように語っている。グッドはピクサーの前身であるルーカスフィルムで社内の警備・施設管理部門に所属していたが、会社が自前で警備を行うほうが、外部の警備会社に委託するよりもはるかに効果的だと思っていた(彼は警備会社での勤務経験もあった)。

 そこで、ピクサーがエメリービルに新たに本社ビルを建てることになった折に、「私はスティーブにメールを送り、持論を述べました。警備は社内で、自分たちのチームで行うべきであり、他社に外注すべきではないと。プロジェクトを担当していたトム・カーライルにもCCで送りました。そしてスティーブから簡潔な返事が来ました――『100%賛成だ』。1週間ほど経った後、食堂でトムを見つけたので、例の件はどうなるのか尋ねたところ、トムはこう言いました。『僕の経験からして、スティーブがああいう返事をした場合、それ以上の議論は必要ないよ』。こうしてピクサーの保安・警備は社内で運営することが、エメリービルへの移転前に決まったのです」

 もちろん、すべてのコールド・メールが首尾よくいくわけではない。私はマーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジ、そしてもちろんマーク・ベニオフにもメールを送ったことがあるが、返信はなかった。送信したメールアドレスは当て推量によるものだったので、間違っていたのかもしれない。あるいは単に、返事をすべき理由がなかったのかもしれない。それでも、どうということはない。試した価値はあった。