新興国参入から新興都市参入へ

 世界の人口に占める、都市の人口割合は年々高まり、2007年には歴史上初めて、地方を上回ったとされている(国連World Urbanization Prospects)。「都市化」がメガトレンドにおける重要キーワードとして挙げられて久しい。都市のGDPに占める割合、規模ともに巨大だ。一人当たりGDPが10,000米ドルを超える都市も誕生している。たとえば、バンコクやジャカルタがそうだ。もはや新興国としての目線では捉え切れない「市場の発展」が特徴となっている。

 どこの国に行こうかと検討しているうちに、出遅れてしまった――ということもあり得る。発展ステージを見極めるのもいいが、新興国≒途上国という目線が足かせとなっていないか。

 実際に街を歩くとよく分かる。日本のデパートやショッピングモールが市街に溶け込んでいる。定食屋の大戸屋もラーメン店の一風堂もバンコクやジャカルタではもはや普通だ。しかも値段も日本と変わらない。これは、生活水準が相応でなければ説明がつかない。高級感やめずらしさとしての日本食ではない消費の形がある。

 新興国ビジネスにおいても重要なのは「国」そのものではなく、新興国における「大都市」なのだ 。

カード1枚のパスポート
国境はまるで県境

 ASEAN域内の取引額は、2000年代初頭では、米国や日本との貿易額は全体の30%を占めており、域内取引はわずか10%に過ぎなかった。しかし、2013年における日米との貿易取引額は10%と低下し、域内取引は30%強に増大した。貿易が活発化していく中で、域内の経済も大きくなっている。この地域のGDP成長率は、2002年から2013年までの間で年間平均が、12.3%。世界平均の7.3%を大きく上回ってきた。人口も約25年(1990年から2013年)で2億人増加した。

 ASEANならではの広がりに特別なことが起きたのか――そう考えたくもなるが、その理由は、現地で誰でも見つけることができる。

 ASEANの主要空港に降り立つと、自動改札機のようなレーンが設置されている。手に持つのは1枚のカードでAPECビジネストラベルカード(ABTC)と呼ばれる。日本のSuicaやPASMOと似ている。このカードで専用レーンを通過する。高速道路をETCレーンで通過するようなものだ。

「国を跨いだより広い経済圏(ゾーン経済)」という発想がこのカードに表れているのだ。