では優秀な営業担当者がどうするかというと、顧客が果たそうとしている目的について話し合い、自社の商品やサービスでそのニーズを満たす解決策を提案する。最も優れた営業担当者は的を射た質問を顧客に投げかけ、顧客自身でさえ気づいていない問題やチャンスを明らかにしてみせる。

 ある大手新聞社の営業担当者がその好例だった。彼女の仕事は広告スペースの販売だ。いまや新聞に代わる広告媒体は増える一方で、競争はきわめて厳しくなっている。私はこの新聞社にコンサルティングを行う一環で、彼女の訪問営業に何度か同行させてもらった。まず気づいたのは、本人が話をすることは非常に少なく、見込み客からできるだけ話を引き出そうとしていることだった。「この新聞に広告を掲載すれば、なぜ業績向上につながるのか」を顧客に理解してもらうのが自分の役目だと話す彼女は、洞察に満ちた質問を投げかける。広告の種類を説明する時には、相手の希望に沿ったものに的を絞って紹介し、関係のないオプションや特典については一切触れない。したがって、商談はわずか45分で終わる。最後に熱意を伝え、今後の進め方について2~3の提案をする。すると、顧客はそれらを受け入れ、翌週には検討してくれるのだ。このやり方によって、彼女は社内トップ5位以内の営業成績を誇っていた。

●すべての従業員は、たとえそう自覚せずとも何らかの営業活動をしている。したがって、だれもが営業の腕を磨くべきである。
ダニエル・ピンクは自著『人を動かす、新たな3原則』で、人は業務時間の40%以上を営業に費やしていると述べている。つまり、自社の商品やサービスでなくても、アイデアや物事の進め方、問題解決の方法などを他者に売り込んでいるのだ。どのような立場の者であれ、価値を生み出す力と営業能力は不可分の関係にある。

 私は営業を苦手とするカスタマー・サービスやITの担当者と話をする時に、こう強調する。営業とサービスはきわめて似たもので、前者は能動的、後者は受動的なだけである。多少の違いはあるものの、優れたサービスも優れた営業も、目指すところは顧客の抱える問題の解決か、改善方法を見つけることなのだ。

 かつての私のように営業から逃げてはいけない。21世紀にふさわしい、新たな考え方を身につけてほしい。営業こそがあらゆるビジネスを推進する原動力で、それを動かすのは営業担当者なのだから。


HBR.ORG原文:Get Over Your Fear of Sales September 17, 2014

■こちらの記事もおすすめします
営業の成功を左右するのは、テクニックではない
営業成績が振るわないなら、PCのスイッチを切ろう
「人を動かす力」は、後天的に身につけられる
強い営業

 

スコット・エディンガー(Scott Edinger)
エディンガー・コンサルティング・グループ創設者。ハーバード・ビジネス・レビューへの寄稿論文(共著)に「リーダーシップ・コンピテンシー強化法」(本誌2012年2月号)がある。