その恐怖心の一部は、次の要因から生じているのではないだろうか。まず、セールスという行為に対して時代錯誤なイメージをいまだに抱いていること。そして、優秀な営業プロフェッショナルの実際のやり方を理解していないことだ。

 欲しくないものや必要ないもの、高価すぎるものをだれかに買わせることが営業だと見なす人は多くいる。この考え方は、20世紀初頭のアメリカで数少ない営業職の一部として国勢調査の職種欄に記載されていた「行商人」に由来している(huckster、peddler。前者は「押し売り」の意味でも使われる)。不幸なことに、その頃のイメージが現在の営業職の一部にもつきまとっているのだ。「中古車セールスマン」という言葉に込められたニュアンスがその好例である。

 しかし現在、米国勢調査で営業に分類される専門職は28以上もあり、その多くは高度な専門性を求められる。たとえば、私のあるクライアント企業は医療機器業界に属するが、手術中の医師に自社製品の適切な使い方を助言できる営業担当者を抱えている。考えてみてほしい――手術中の医師が、営業担当者に質問をするのだ。これは、昔の「セールスマン」とはまったくの別物だ。

 私は企業から営業改革の支援を頼まれると、まず組織文化を見定め、パフォーマンスを阻害しているネガティブな考え方をなくす取り組みから始める。ネガティブな営業文化を克服するには3つのステップがある。つまり営業組織に、以下の3つを認識させるのだ。

●「自社の商品やサービスを使うことで顧客は利益を得る」という前提で活動すれば、営業とは純粋に人を助ける行為である。
 今日の優れた営業は、顧客が目標を達成するために必要なことを気づかせ、それに応える。ビジネスの効率を上げる、利便性を高める、老後の生活を充実させる、安全性を高める、寿命を延ばす、といったことだ。こう考えれば、営業は単に流通部門を補助するだけの存在ではなく、自社の商品やサービスで顧客がどのような利益を得るかを伝えるパイプ役になるのだ。

●「どう売るか」が、顧客に提供する価値の重要な部分を占める。
 私はこれまで実施してきた調査や自社の営業チームの観察を通じて、1000回以上の商談に立ち会ってきた。そこからわかったのは、優秀な営業担当者は商品を売りつけたり、契約の締結を迫ったりしないということだ。すなわち、自社の商品やサービスの素晴らしさをくどくど述べることもなければ、押しつけることもない(いわゆる「下手な鉄砲も数打てば当たる」式の売り方はしない)。多くの営業担当者、とりわけ1990年代以前に営業の世界に入った人々にとって、これは邪道に思えるかもしれないが、本当なのだ。