次にマンとキャドマンは、人がもっと心の底から退屈な思いをしたらどうなるかを検証しようと考えた。そこで第2の実験では、被験者たちを3つのグループに分けた。1つ目は退屈な作業を課さない対照群、2つ目は電話帳の数字を書き写すグループ。そして3つ目のグループには、単に電話帳を読むだけという、さらに退屈な作業を課した。その後いずれのグループにも、創造性が必要となる作業をしてもらった。

 その結果、最も退屈したグループ――電話帳を読むだけ、という完全に受動的な作業をした人たち――が最高の創造性を発揮した。その成績は、最初の実験で電話帳の数字を書き写したグループをも上回った。

 この実験結果から、次のような示唆が得られる。レポートを読んだりつまらない会議に出ていたりといった、受動的な活動の最中に退屈さを感じると、「白昼夢効果」(daydreaming effect)が促進され創造力に作用する。退屈さが受動的であればあるほど、白昼夢効果が得やすくなり、その後で創造性が高まるようだ。

 もう1つの論文を見てみよう。ペンシルベニア州立大学のカレン・ギャスパーとブリアナ・ミドルウッドは、最初の論文とは異なるタイプの退屈な作業と創造性テストを用いて、同じような効果を発見している(英語論文)。実験では4種類の映像を用意してどれか1つを被験者に見せ、「リラックス」「高揚」「苦痛」「退屈」のいずれかの感覚を意図的に誘発した(ただし被験者には、どの映像を見るかはランダムに決まると事前に伝えた)。その後で、遠隔性連想検査(Remote Associates Test)というものを受けてもらった。これは一見互いに関係なさそうな3つの言葉(例:ひも、小屋、ヤギ)を示し、それらに関連する4つ目の言葉(この例ではチーズ)を考えてもらうテストである。遠隔性連想検査は、「収束的思考」――やはり創造プロセスを補完する要素で、与えられた状況下で唯一の正解を見出す能力と関わっている――を測るために広く用いられている。

 マンとキャドマンの研究と同じく、この実験でも「退屈」を誘発された被験者たちが、他の3つのグループよりも優れた成績を上げた。ギャスパーとミドルウッドによれば、退屈さが創造性を高めるのは、人が「退屈さを紛らわせたい」と望むからだという。つまり退屈すると、目新しくてやりがいのある活動をしたいというモチベーションが高まるのだ。言い換えれば、退屈を持て余した脳はおもちゃを欲するということだ(小さな子どもを乗せて長時間ドライブした経験があるなら、この現象はお馴染みだろう)。

 これら2つの研究を合わせて考えると、仕事中にたびたび感じる退屈さは、上手く活かせば仕事の――少なくとも、創造性が必要な作業の――質を高めてくれる可能性がある。プロジェクトやプログラムを新たに考案しなくてはならない時(拡散的思考が求められる時)は、その前に単調な作業に集中する時間を取るといいかもしれない。たとえばメールの返信やコピー取り、データ入力などだ。その直後ならば、マンとキャドマンの実験が示すように、より多くの(そしてより創造的な)アイデアを思いつける可能性がある。また、問題を詳細に検討して、簡潔で効果的な解決方法を考え出す必要がある時(収束的思考が求められる時)は、いつもの退屈なスタッフ会議の後にそのスケジュールを入れるといいだろう。問題解決を目的とする活動の直前におもしろみのない作業を行うことによって、創造的な解決策を見出すのに適した思考を呼び覚ますことができるかもしれない。


HBR.ORG原文:The Creative Benefits of Boredom September 9, 2014

■こちらの記事もおすすめします
忙しい人ほど必要な「考える時間」のつくり方
ひらめきを得るには、本題と無関係の作業を挟もう

 

デイビッド・バーカス(David Burkus)
オーラル・ロバーツ大学の助教授。経営学を担当。リーダーシップ、イノベーション、戦略のアイデアをシェアするLDRLB(リーダーラボ)の創設者。著書にThe Myths of Creativityがある。