上記の数値は十分恐ろしいが、これだけでは順守率低下の直接的な原因が「シフト内での疲労の蓄積」であるとは必ずしもいえない。そこで調査チームは、仕事の負荷という要素を加味して上記の結果を再検証した。すると、勤務時間が長引いてさらに仕事の負荷が多い状態では、頭を切り替えることがより難しくなり、手洗いの頻度はいっそう低下していた。

 特筆すべきは、仕事の負荷増大による影響は最初の数時間のうちに現れたことだ。

 ダイはこう述べる。「労働の時間と負荷に関する研究の大半は、職務内容が従業員の意欲とパフォーマンスに与える長期的な影響に焦点を当ててきました。我々の調査では、多忙な1日において始業から数時間以内でも負担が蓄積されることで生じる、短期的な代償を明らかにしています。我々の調査結果を概念的にまとめれば、こういうことです。人は(仕事の慌ただしさによって)頭の切り替えを頻繁に求められると、自己規制力が消耗します。すると本来の職務のみに強く集中するようになり、二次的な作業に向ける注意はいっそう低下するのです」

 この傾向は、病院運営者をはじめ医療関連のマネジャーにとどまらない。ダイによれば、疲労による二次的作業への怠慢は他の分野、たとえば安全規定の順守を義務付けられている油田作業員や、取引ルールに注意を払うべき投資銀行家(名うての長時間労働者たちだ)の間でも、問題になりうるという。

 ただし、従業員に二次的作業を順守させるために、マネジャーにできる措置がいくつかある。一例として、今回の調査結果によれば、シフトの合間に休憩をはさむと順守状況が大きく改善した。特に、従業員がより長時間にわたって勤務した後に、より長い休憩を取った場合に改善が顕著だった。ダイいわく、「医療提供者が仕事を中断してより長い休憩を取った直後のシフトでは、順守率が上昇しました。過去の調査に基づいて考えると、休憩中に仕事から離れてリラックスできたと感じる人ほど、休憩の恩恵を受けやすくなるといえるでしょう」

 ダイの提案によれば、マネジャーは二次的作業への注意を――特にシフトの終了近くに――喚起する必要がある。できれば、その日の勤務時間に応じた方法で働きかけるとよい。それによって「1日の仕事のペースに変化が生まれ、従業員が定期的に自己規制の力を回復できる」ようにするのだ。また、上司は部下(そして自分自身)に、疲労回復に効くことが実証されている活動(昼寝や、自然の風景を眺めるなど)を勧めてもいい。

 つまり、散歩に出かける必要があるという証拠が、ここにもあるわけだ。


HBR.ORG原文:Research: We’re Too Busy to Follow the Rules September 10, 2014

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グレッチェン・ガベット(Gretchen Gavett)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のアソシエート・エディター。