したがって必要なのは、実際には共同で作業していなくても、1つのチームとして働いているという「感覚」を従業員に持ってもらうことだ。スタンフォード大学のプリヤンカ・カーとグレッグ・ウォルトンの最近の研究のおかげで、これを実現する効果的な方法が明らかになった。「一緒に」(together)とただ言うだけでいいのである。

 カーとウォルトンの実験では、被験者を最初に少人数のグループとして集め、その後各メンバーを別々の部屋に隔離して難しいパズル問題を単独で解いてもらった(英語論文)。この実験では2種類のグループを設け比較した。1つは「心理的に一緒」のグループで、被験者たちには次のことを告げた。たとえ別々の部屋に分かれて取り組んでいても、これは「チームが“一緒に”やるタスク」であること。そして「チームがパズルを解きやすくなるように、後ほどメンバー宛てにヒントを書いたり、メンバーからヒントを受け取ったりできる」こと。

 これとは別に、「心理的に孤立」したグループも設けた。この被験者たちには「“一緒に”やるタスク」であるとは告げない。そしてヒントの授受は、他のメンバーとではなく各自と研究者との間でやり取りされると告げた。どちらのグループの被験者も、実際にパズルを解くのは単独作業であることに変わりはない。唯一の違いは、「一緒に」という指示が喚起しうる感覚だけである。

 この些細な操作は、実に大きな効果を生み出した。「心理的に一緒」の被験者は、「孤立」のグループよりも作業時間が48%も長く、正解数も多く、作業内容を詳しく思い出すことができた。そして作業による疲れや消耗も少ないと述べた。さらに、パズルが共同作業だと認識することでより面白く感じられたという。彼らをより長い時間作業に取り組ませたのは、チームへの「義務感」という外発的モチベーションではなく、「面白い」という内発的モチベーションだった。

「一緒に」という言葉は、他者との関わりを脳に認識させる強力な合図となる。どうやらこの言葉自体が、仲間意識を感じさせる報酬のように作用するようだ。つまり帰属や絆の感覚をもたらし、共通の目標に取り組む信頼できる人たちの存在を感じさせるのだ。

 経営幹部やマネジャーは、この言葉をもっと頻繁に使うといい。さもなければ、コミュニケーションの機会をみすみす逃すことになる――冗談ではなく、私はそう考える。「一緒に」を合言葉にすることで、部下に独りではないと感じさせれば、モチベーションを高め最高のパフォーマンスを引き出しやすくなるだろう。


HBR.ORG原文:Managers Can Motivate Employees with One Word August 13, 2014

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ハイディ・グラント・ハルバーソン
(Heidi Grant Halvorson)

コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。