グローバル組織のジレンマ

 統合か、現地化か。集権か、分権か。グローバル企業のマネジメントにおいて各国のマネジメントは、「古くて新しいジレンマであり、長い間、振り子のように触れてきた」と、IMD教授バラ・チャクラバーティ氏は言う。

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バラ・チャクラバーティ(Bala Chakravarthy)氏

専門は戦略および国際マネジメント。ハーバード・ビジネス・スクールにて経営学博士(DBA)。タイのPTTグループを始め、BRICs諸国に造詣が深い。

 いわく、「P&Gやネスレなど、世界に冠たるグローバル企業では、ブランド戦略などにおいて、本国ヘッド・クォーターの統制力を緩める気配はない。しかしその一方で、新興国市場の急成長を背景に、現地の権限を高め、スピードを加速させる必要性も十分に認識している」。

 グローバル組織の研究といえば、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のクリストファー・バートレットと組織戦略論の大家スマントラ・ゴシャールが有名であろう。1992年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に寄稿した論文「グローバル・マネジャーとは何か」では、各マネジャーの要件を以下のように示している(Christopher A Bartlett and Sumantra Goshal, “What is a Global Manager?,” HBR, September-October 1992)。

●ビジネス・マネジャー:
 ストラテジスト+(資源配分の)設計者+調整者
●カントリー・マネジャー:
(市場機会の)感知者+(ローカル・リソースの)構築者+(戦略実行の)貢献者
●ファンクショナル・マネジャー:
(専門知識の)探索者+(ベストプラクティスの)交配者+(イノベーションの)推進者

 そして2010年代に入り、新興国市場の成長とともにリージョナル・マネジャーやカントリー・マネジャーの相対的重要性が上がっただけなく、求められる役割も一変した。もはやマネジャーの階層は、コーポレート>事業エリア>国・ビジネスユニット、というような単純なピラミッド構造ではなくなっている。チャクラバーティ教授は、バートレットとゴシャールの区分をもとに、その役割の広がりを以下のように整理する(図中の黄色い部分。赤字が変更点)