ソーシャル・メディアが
企業のブランドに及ぼす影響

 もう一つ、マーケティングにおける重要な動きとして注目しているのが、ITやソーシャル・メディアの普及による購買動向の変化です。いまや企業の購買担当者も、一般消費者と同様にさまざまな情報をウェブサイトやSNSのコミュニティから得ており、「43%のバイヤーが、ベンダーとの取引前に、だれから何を買うかをすでに決めている」という調査結果すらあります。顧客がウェブサイトやソーシャル・メディアを通して行動するのであれば、企業としてもそれに応え、エンゲージメントを図っていかざるをえません。

 シスコでは、ITに関する予算のうち約1割がマーケティング部門に投資されています。かつて、これほどまでマーケティング部門にIT投資がなされた時代はなかったと感じていますが、あえて大胆な言い方をするならば「そうするほかに選択肢がない」という実態の裏返しともいえるでしょう。

 昔は、トラブルがあれば直接電話がかかってきましたが、いまでは〈ツイッター〉で世界中に拡散されてしまうという現実があります。つまり、個々の顧客が企業のブランド価値に大きな影響を与える時代になったということです。企業のウェブサイトに個人のお客様が製品のレビューを投稿できるようになった――という状況は経営者にとって不安材料かもしれません。しかし、顧客からのフィードバックをどう受け止め、どう対処するかがこれからの企業の価値を形成するといっても過言ではないでしょう。

 そこでシスコでも、ウェブ会議システムとして提供している〈WebEx〉(ウェブエックス)のマーケティングを手掛けるにあたり、〈ツイッター〉や〈フェイスブック〉などをはじめとしたソーシャル・メディアを通じて、顧客がどういう意見を持っているのか調査しています。それには、専用に開発されたツールでソーシャル・メディアの情報を収集するのですが、〈WebEx〉に関してどのようなキーワードが使用されているかを集計、分析し、迅速なフィードバックにつなげるものです。

 たとえば「価格」というキーワードが多く検出されれば、すぐにプロモーションの実施を検討しますし、「問題」や「不具合」というキーワードが見つかれば、サポート体制の見直しを検討しなければなりません。つまりITツールを活用することで、次に何をすべきか、これまでとは比較にならないほど早い段階で知ることができるようになったわけです。これこそが、全社において率先してマーケティング部門をデジタル化しなければならない、と私が考える理由でもあります。

すべての従業員が
共通のビジョンを持つ

 今後さらに、マーケティング部門に新たな役割が求められることは間違いないでしょう。当社では、前述のような顧客の購買行動の変化に対応するため、オムニチャンネルの構築を進めていますが、それぞれの販売チャネルでお客様に出すメッセージやブランド訴求、お客様がサービスに触れた時の体験などを統合し、いかに一貫性を持たせるかが大きな課題となっています。

 もちろん、マーケティングは企業のブランド戦略そのものですから、企業の目標とかけ離れていてはいけないという原則があります。お客様によりよい経験を提供するためにも、まずはマーケティング部門を含めた7万人の従業員で、共通のビジョンを持つということも、私たちの大きな目標の一つです。

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