ケイパビリティを見出し
成長させるためのHOW

 HOWの二つめは、ケイパビリティ(WHAT)を見出し成長させるための行動と制度である。たとえば、職務・役割に求められる人材のケイパビリティ要件に基づき、人材を集め、育て、配置し、幹部等のリーダーをつくっていくことと、そのために必要な採用・育成・配置・登用の諸制度である。

 青の組織では、ミッション・ビジョンなどの目的(WHY)に照らして必要なケイパビリティ(WHAT)が定義され、そのケイパビリティを純粋に反映する形で必要な人材像が決まり、その人材像に合わせて採用・育成・配置等を行うという非常にストレートな流れとなる。その際、人材は流動するという前提で人事を考える青い組織では、採用が特に重要で、通年で継続的に採用する感覚があり、重要度が高いので、採用のところに絞って事例を挙げよう。

 グーグルではその流れが徹底されており、エンジニアを中心とするcreative smartsと呼ばれるような人材の採用がマネジャーにとっての最優先事項と位置付けられている。そういう人材の採用のために人事予算の70%を費やしており、これは従業員1人当たりに使う採用予算としては、米国の同業界の平均の2倍にもなる(*2)

 同社は、採用インタビュー技術・プロセスの質の向上と効率化にも並々ならぬ力を入れている。「リーダーシップ」「役割に求められる知識」「認知能力」「グーグルとの相性」という4つの評価項目に沿って、研ぎ澄まされた質問と知的な会話を通じて評価する。採用手順も、採用関連のデータ分析を行って最も効率的な方法を探求している。たとえば、1人の対象者に対して最大限5人(5回)が面接し、各インタビューは30分で、各評価結果は意思決定者がざっと見て分かるような同一フォーマットで記入することなどを定めて励行している。

 緑の組織も採用・育成・配置・登用の諸制度を揃えているが、制度の内容や使い方は青の組織とかなり異なる。たとえば、緑の企業では、国内採用において新卒採用主義をとり、新卒採用された人材の大部分が長期間その企業に残り、その間、諸現場をローテーションして過ごし、その企業の緑色に染め上げられていく。その企業らしい緑色への染まり具合を見て、管理職や幹部やトップが輩出される。

 これまでのところ、どの企業を見ても染まり具合がよいのは日本人男性大卒で、日本の大学から新卒入社した人々である。つまり、緑の組織で求められる人材の要件として、企業の文脈になじみ、文脈に沿って諸事を進めることが必須条件となっていることがケイパビリティ(人材)の選別においても強く効いている。もちろん、青の企業と同様に、目的(WHY)や専門性やリーダーシップ等のケイパビリティ(WHAT)に照らした評価も行われるが、結局のところは緑への染まり具合が優先される。その証拠に、名だたる日本企業のグローバル本社の管理職以上のポジションについている人を見ると、若手や中途採用者や女性や外国人など緑に染まりにくい人材は極めて少ない。

 このように、「文脈」が「ケイパビリティ」よりも優先されるという力関係が、世界中の多様な人材のケイパビリティを生かす上でのハンディキャップとなっている。少なからぬ日本企業において、すでに多様な人材が流入したことでまだら模様を呈しているわけだが、せっかくの多様性を生かし損ねて、まだら模様化した組織をうまくマネジメントできない理由の一つになっている。

*2 Eric Schmidt, Jonathan Rosenberg “How Google Works”, Grand Central Publishing, September 2014およびDeloitteベンチマーク調査より。