これらはすべて、1つ目の転換を象徴している。気候変動への取り組みに対する強い信念と決意が、民間セクターに広がっているのだ。ビジネス界において、この動きはもはや傍流ではなくなった。非営利団体のクライメット・グループが9月に開催したイベント「クライメット・ウィーク」では、ヴァージン・グループの会長リチャード・ブランソンやユニリーバのCEOポール・ポールマンなど気候変動対策の先頭を行く企業のリーダーたちが、初日のパネルディスカッションに参加。ポールマンは世界各国の政府に対して、政治に大きな影響力を持つ企業(おそらく化石燃料関連の大手企業だろう)の言いなりになるのをやめるべきだと訴えた。「声の大きな一握りの企業にばかり耳を傾けず、ビジネス界の多数派の声を聞くべきです。いま求められているのは、炭素価格制度の導入や、クリーンテクノロジーと省エネへのさらなる支援なのです」

 ポールマンとブランソンはこの手の会議の常連だが、他のリーダーたちもこの動きに加わりつつある。アップルのティム・クックもクライメット・ウィークに参加し、「何もしないで済む時代は終わった」と発言。「経済と環境のトレードオフを考える必要はありません。イノベーションを起こし、高い目標を掲げれば両立は可能なのです」と語っている。

 しかしながら、目標をそれほど高くする必要はないこともわかっている。最近の報告で注目に値するのは、炭素削減のコストがきわめて安価になりつつあることだ。

 この2つ目の転換こそ、気候変動への取り組みを大きく後押しするだろう。つまり経済性の向上が、環境に優しい経済システムへの移行を強く支えるのだ。ウィー・ミーン・ビジネスの報告によると、アメリカではエネルギーの効率化に対する投資の内部利益率は実に平均81%に達しているという。また、科学的根拠のある目標を掲げ、積極的に環境対策に取り組む企業の内部利益率は27%だと報告されている。最も高価な手段とされる再生可能エネルギーの価格でさえ、企業のCFOを驚かせるほど急落している。資産運用会社ラザードの計算によると、太陽光発電技術のコストは、この5年間で80%近く下がったという。炭素を大幅に削減すると損をするという考えは、きわめて時代遅れになっているのだ。

 このように、企業は「クリーン経済」の実現に向け、新しいビジネスの進め方を求めて大きく前進している。私はこの潮流を「大転換」(Big Pivot)と呼んでいる。ただし祝杯をあげる前に、いくつか注意すべきことがある。社会を形成する他の2つの柱――政府と市民もまた前進しなければならないのだ。各国政府はこれまで、気候変動対策に関する国際協議で大きな成果を上げてきたとは言い難い。しかし、地域単位では充実した対策が講じられている。たとえば、世界各地の46の炭素市場が全炭素排出量の12%をカバーしている。これは、小さいとはいえそれなりの数字だろう。