課題設定のコツは「Should」で考えること

 業績の悪い代理店の業務改善の話に戻りましょう。

 代理店といっても、A社の代理店と、B社の代理店では、正しい課題の立て方は異なります。A社は、強い地場企業を使って販売を行っているとしましょう。その場合は、代理店の業績が悪いということは、現場の業務の効率やサービスの方法などに課題があるというのは正しい課題設定ですから、それをもっと絞り込んでいけばいい。

 一方、B社は、代理店が弱っているというので、B社から資本と同時に人も送っているとしましょう。その場合、代理店の業績が振るわないのはB社本体にも原因があるのですから、代理店だけを見て業績改善を行うというのは、正しい課題設定にはなりません。

――なるほど、本当の課題はどこにあるか、ということですね。

 イシュー・アナリシスでは、最初からすべて「Should」で考えていきます。通常は、「What is the market?」と、市場分析から始めますね。マーケットをセグメントして、キー・セグメントは何か、それぞれのパフォーマンスはどのくらいかを分析をしていく。これはイシュー・アナリシスではありません。

「Should」で考えることを別の例で、説明しましょう。今度はC社が、「軽自動車をアメリカで売りたいのだが、アメリカに軽自動車の市場はあるのか、調べてほしい」と依頼してきたとします。この場合、依頼の仕方そのものが、課題設定として間違っています。その理由が分かりますか。

――「Should」で考えていないということでしょうか。

 まず、「何台売れればいいのか?」ということから始めなければなりません。
「20万~30万台売りたい」というのであれば、アメリカの自動車市場は小型トラックまで入れると1500万台の市場ですから、誰も軽自動車を売っていないから本当には分からないけれど、数十万台程度の需要はあると考えても間違いではないでしょう。市場があるかないかを調べるのは的外れで無駄な作業です。

 すると次のイシューは、「どこから攻めるべきか?」「どういうスペックの車にすべきか」となる。このレベルの問いをザーッと書き出していくのです。

 一つひとつ考えていって、まず、「どこから攻めるべきか?」という問いに対して、「最初は西海岸の●▲セグメントから攻めていくべき」という仮説ができたとします。そうしたら、その仮説が正しいかどうかを分析する。分析によっては仮説が逆証明されることもある。そしたら、あらためて仮説を立て直すのです。この作業を、ザーッと書き出した問いに対して次々とやっていきます。

――根気とスピードが要求されますね。

 仮説の設定と分析による証明、逆証明を繰り返していくと、「何か」にぶつかります。例えば、安全性の問題、あるいは修理のサービス・ネットワークの問題など、いろいろな問題が出てきます。そこで全体を新たな洞察を持って見直しして、それを基に、あらためて仮説を作り直し、もっと絞り込んだ形で「何がキーなのか?」「決め手になるのは何か?」と徹底的に突き詰めていきます。

 経済性もクリアして、安全性も確保し、評判も落とさない、それなりに売上げ貢献もする。それらをすべて満たすには、多分アメリカ中に薄く広く売ることではないでしょう。「どこにフォーカスするか?」「どこを深く掘ればいいのか?」を徹底的に考え抜きます。

 C社は、軽自動車をアメリカ市場で売り出すにあたり、カリフォルニアから参入すべき、なぜなら……。第1にやるべきことは、●▲セグメントの顧客に強い乗合ディーラーを探すこと、なぜなら……。そうやって「Should」の内容をどんどん書いていき、一つひとつ検証していきます。

 その作業を何度も何度も繰り返すと、ようやく本当の課題が見えてくる。課題、課題というけれども、そう簡単に見つけられるものではないということです。

 このC社の例の場合、こうやって導き出した結論を基に実行するかどうかを最後に決断するのは経営の意志であり、演繹的、自動的には決まりません。しかし、「アメリカ市場に入るべきか、否か」という課題設定をしていたのでは、ああでもないこうでもないという議論に終始し、ここまで深い分析と市場理解にはたどり着けないはずです。その意味で適切な課題設定が大事なことは分っていただけるでしょう。

(構成・文/田中順子)