最初の問いをまずは疑う

――現象を並べても、課題を設定することにはならないことがよく分かりました。では具体的にどのような方法があるのでしょうか。課題はそう簡単に見つからないとしたら、何か見つけるコツのようなものはあるのですか。

 当たり前のことですが、繰り返しよく考えることです。考える時間を十分使わないで課題設定はできません。楽をしてはいけないのです。ただ頭の中で考えるのではなく、手を動かす作業をすることが必要です。しかもその作業は、粘り強く繰り返し、繰り返し行わなければなりません。

――具体的には、どうすればいいのでしょう。

 コンサルティングファームで行われる手法に、「イシュー・アナリシス(課題分析)」というものがあります。経営コンサルティングでは、プロジェクトの初期段階で、仮説を設定してその仮説が適正かどうかを検証するために分析をします。これを何度も何度も繰り返して、仮説を磨いていきます。この一連の仮説を構築する作業がイシュー・アナリシスで、これは私が考えているようなレベル、すなわち、「社会システム・デザイン」という一企業を超えた、社会の課題設定にも活用できます。

 例えば、自動車メーカーから、代理店の業績が悪いので業務改善をやってほしいと依頼されたとします。コンサルタントはまず、「代理店の業績が悪いので、業務改善が必要」という課題設定に対して、「それは本当の課題ですか?」という質問を立てます。

――最初の「問い」をまず疑うのですね。

 相手が提示してくる問いには、相手の仮説が含まれています。まずはその仮説が正しいかどうかを検証するのです。

 ちょっと横道にそれますが、こんなコンサルタント・ジョークがあります。

「今何時ですか?」と聞かれた時、コンサルタントは何と答えるか。

 あるコンサルタントは、「2時58分31秒85、です」と答えます。

 別のコンサルタントは、「あなたは本当に時間をお知りになりたいのですか。ほかのことを考えていたのではないですか。食事をしそびれてお腹がすいたけど、ご飯を食べようかどうしようか、もうこんな時間だからやめておこうかとか。ほかのことをお考えになっているのでしたら、それをまずは一緒に考えてみましょう」と促します。

 そしてもう一人のコンサルタントは、「何時とお答えすると喜んでいただけますか」と尋ねるというものです。

 コンサルタントにもそれぞれ特徴があるというジョークなのですが、課題設定において重要なのは、二番目のコンサルタントのような考え方で、問いの背後にある課題を掘り起こすことから始めることです。

――最初に間違った課題を与えられている可能性があるのですね。そうするとすべてが間違った方向に行ってしまう。答えがかえって本質的な問題をわからなくしてしまうこともあり得るのではないでしょうか。こんな危険なことはないですね。