アマゾンのように急成長を遂げているeコマース企業が、膨大な費用を未来への投資に注いでいるのは事実だ。しかし継続的な投資というものは、市場の成熟によって単に現状維持の手段へと成り下がってしまうことも多い。たとえばアマゾンは、フルフィルメントセンター(商品管理、配送拠点)を置く州を増やすごとに、顧客から州税(消費税)を取ることを余技なくされている。これは平均でおよそ7%の価格上昇に跳ね返る。そしてオハイオ州立大学の研究者らによれば、税を上乗せされる州の顧客は購入額を10%減らしているという。低価格の維持や差別化のための大きな投資は、このような犠牲を伴う場合があるのだ。上場しているeコマース企業のうち数社は、競争の激化に直面しながら成長率と利益率を低下させている。

 デジタル技術の急激な進歩は、eコマースの優位を今後も高めるはずだ、という主張が世間でよく聞かれる。しかしデジタルとフィジカルの最も優れた部分を融合させる小売企業ならば、オンラインと店舗の両方でデジタルの長所を活かせる(この「デジカル」イノベーションについては、HBR2014年9月号の"Digital-Physical Mashups"で詳述)。

 その例をいくつか挙げれば、まず店舗でのより効果的なビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)が可能となる(英語記事)。顧客には複数のサービス方法を用意し、好みのものを選んでもらえる。レジ精算を迅速化でき、個々の顧客向けに製品・サービスをカスタマイズできる。顧客は店内で買い物中に、海外にいる専門家や信頼できる友人とバーチャルで接触・相談できるようになる。RFID(ICタグの情報を無線通信で識別・管理する技術)によって、店内での一連の接客業務を迅速化できる。スーパーマーケットで、顧客は買いたい生鮮食品を指で差し示し、自動化されたバックルームでそれらが自動的に選別・梱包される。

 私は、リアル店舗の小売企業が直面する変化の大きさを過小評価しているわけではない。しかしデジカル戦略によって、より幅広い顧客に魅力的なサービスを提供しながら、経済的メリットも享受できる。だからこそ、「他と差別化できるよいアイデアが見つかったら、ぜひアマゾンもリアル店舗を出したい」と、あのジェフ・ベゾスでさえも言ったのではないだろうか。(注:このベゾスの発言は2012年11月、著名インタビュアーであるチャーリー・ローズの質問に答えてのもの。その後2014年10月、ニューヨークでのリアル店舗オープンの可能性が大々的に報道された。)


HBR.ORG原文:Online Shopping Isn’t as Profitable as You Think August 21, 2014

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ダレル・リグビー(Darrell Rigby)
ベイン・アンド・カンパニーのパートナー。小売事業とイノベーションの専門家。著書にWinning in Turbulence,HBR寄稿論文に「デジタルを取り込むリアル店舗の未来」(DHBR 2012年7月号)がある。