退職金制度の統合、社宅制度の廃止
P&G標準を導入し、文化を変える

 一つ目の例は退職金制度の統合である。1991年、P&Gは化粧品メーカーのマックス・ファクターを買収した。これに伴い、日本におけるさまざまな仕組みを統合する必要が生じた。その一つが退職金制度だった。

 マックス・ファクターの退職金制度は非常に手厚く、P&Gの制度への片寄せによって、一部の社員は不利益を被ることが予想された。こうした制度変更を実施するためには、一人ひとりの社員と組合の承諾が必要だ。人事部門の改革チームは粘り強く話し合い、約3年をかけて統合することができた。

 このほか、年功的な要素の残る職能給から職務給への転換、成果に基づく報酬制度への移行、家族手当や住宅手当など各種手当の整理も行った。こうして、さまざまな仕組みをP&G流へと切り換えていった。

 社宅制度も廃止した。そもそも、社宅に住む社員と住めない社員がいること自体がフェアではない。仮に全社員に社宅を提供したとしても、立地や広さなどの点で不公平が生じる。このような制度は、少なくともP&G的ではない。

 当然、社宅に住んでいる社員からは反発があった。私たちは社宅制度の問題点を丁寧に説明して理解を求めた。「Aさんに社宅はなく、Bさんは社宅に住んでいるとします。Aさんのほうがハイパフォーマンスだったとしても、報酬全体で見れば、Bさんのほうが高くなります。こんな不合理なことがありますか」という具合だ。

 そのうえで、P&Gの文化や目指す方向についても語った。パフォーマンスベースの報酬制度は、P&Gのスタンダード。それにより、優秀な社員の一層の成長が促進される。そんな文化を根付かせたい。時間をかけて話し合いを続け、ようやく社宅をなくすことができた。

 この例に見られるように、制度と文化は密接に関係している。私たちは制度をP&G流に変えるだけでなく、その取り組みを通じてP&Gジャパンに、新しい時代にふさわしいカルチャーを根付かせようとした。次回はこの文脈を延長し、英語の公用語化や女性の活躍できる環境づくりなどについて詳しく述べたい。