サブスクリプション型の事業でも、同様に見事な結果が示された。取引型事業では顧客のリピート率が重視されるのに対し、サブスクリプションでは顧客が忠実であり続ける期間が重要となる。分析の結果、顧客体験スコアで最低点をつけた会員が翌年も登録を続ける見込みは、わずか43%であった。対照的に、最高の評価(9点または10点)をつけた会員の場合、少なくともあと1年登録を更新する見込みは74%であった。

 さらにこのデータから、将来にわたって会員を継続する期間を、顧客体験の質に基づいて予測することもできた。平均すると、最低点をつけた会員が留まる期間は今後1年と少しの間だけだ。これに対し、最高点をつけた会員は、今後6年間も会員であり続ける可能性が高い。

 この差は実に大きい。

 顧客体験の向上に投資しない当然の根拠としてよく耳にするのは、「コストが高くつく」というものだ。しかし企業幹部と話してみると、往々にして逆のことを聞く。つまり、素晴らしい顧客体験を提供すると、サービスのコストが以前よりも実際には減少するというのだ。不満を抱えた顧客は、結果的に高くつく。返品が増えたり、サポートが必要となったりするからだ。不満の根源を体系的に解決すれば、顧客のリピート率を高めるのみならず、サービス提供にかかる費用を減らすことにつながる。たとえば携帯電話事業者のスプリントは、顧客体験の向上に取り組んだ結果、サポートの費用が最大33%減少したと公表している(英語サイト)。

 顧客体験への投資が事業上正しいか否かを、価値観の観点から論じ合うのはもう終わりにしよう。これは信条の問題ではなく、顧客の行動の問題なのだ。適切なデータをつなぎ合わせれば、優れた体験とお粗末な体験の差がもたらすインパクトを定量化できる。そして組織の全員に、その影響がいかに大きいかを示すこともできるのだ。

※顧客体験のインパクトに関する報告書の完全版は、メダリアのサイトからダウンロード可能(要申請)。


HBR.ORG原文:The Value of Customer Experience, Quantified August 1, 2014

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ピーター・クリス(Peter Kriss)
メダリアのシニア・リサーチ・サイエンティスト、およびビジョン・プライズのリサーチ・ディレクター。行動科学の知見とテクノロジーを融合させ、社会的・経済的に成果をもたらすコミュニケーションの構築を支援する。