7.足すだけでなく、時には引いてみる
 チャールズ・デュヒッグは著書『習慣の力』のなかで、イラクの小さな町に駐留していたある米陸軍少佐にまつわる優れた逸話を紹介している。町の広場には連日大勢の人が集まり、夜になると暴動が頻発していた。さてどう対処すべきか――群衆の数が増えたら追加部隊を動員すべきだろうか? 否、少佐がとった措置は、食べ物を売る屋台を広場から移動させるというものであった。夜になり、広場に食べる物はなく、群衆は暴動を起こす前に散り散りになっていった。

 人々の行動を変えるには、その行動を可能にしている物事、誘発要因やバリアを取り除くというやり方がある。多くのマネジャーは新たに加えるべきことで頭がいっぱいで、引き算の重要性を忘れがちである。

8.アメとムチを、恐れず利用する(ただし厳密に実施する)
 行動変革というテーマをここで扱う以上、伝統的な人事施策を含めないわけにはいかない。すなわち給与、ボーナス、昇進というインセンティブだ。モルガン・スタンレーの行員に関する、ハーバード・ビジネススクールの有名なケーススタディがある。昇進の候補者である彼は成績は優秀だが、態度・行動に関する360度評価の結果はかんばしくない。この場合、インセンティブは実績と望ましい行動の両方に関連づける必要がある。

 ただし、ダニエル・ピンクが著書『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』で強調しているように、このような外発的な賞罰は非創造的な行動に対してのみ有効である。たとえば既成概念にとらわれないイノベーションを促進したい場合などは、あまり効き目がない(詳細はピンクのTED動画を参照)。

9.指導とコーチングをうまく施す
 行動の多くは、技能的な側面を伴う。たとえば仕事にもっと優先順位をつけようという意思があっても、その方法がわからないということがある。人の行動を変えるには、よい教師、あるいはコーチになろう(自分自身の行動を変えたいなら、よい学習者になろう)。そして筋力トレーニングと同じように、変えたい行動を訓練する必要がある。特に暗黙の行動(例:よい聞き手になる)は、訓練が難しい。

10.採用・解雇の基準に、行動特性を盛り込む
 上記9つの方法は、「人」の変革に関するものだ。しかし「チーム構成」を変える、つまり選抜という方法も挙げておきたい。望ましい行動特性を持つ人材を確保し、明らかにそうでない人材には去ってもらうということだ。人材の適性に関する理論に従えば、人の強み(現在の行動特性を含む)を職務上の要件とマッチさせる必要があるのだ。これはあなた自身にも当てはまる。みずからをクビにして、もっと自分の強みに適した仕事を見つけるほうがよいこともある。

 以上、10の原則はいくつかの異なる理論体系に根差しているが、併記されることはほとんどなかった。まとめると、
●目的を明確にする(1~3)
●人間関係を活用する(4と5)
●状況に少し手を加える(6と7)
●従来の人事施策を改良して用いる(8~10)
 ということになる。

 組織における変革の取り組みが実を結ばないのは、マネジャーたちがこれらのうち2、3の方法しか実行しないからである。ぜひ、すべてを活用していただきたい。


HBR.ORG原文:Ten Ways to Get People to Change September 21, 2012

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モルテン・T・ハンセン(Morten T. Hansen)
カリフォルニア大学バークレー校およびINSEAD教授。ジム・コリンズとの共著に『ビジョナリーカンパニー4』がある。2013年、Thinkers50により「最も影響力のある経営思想家50人」の1人に選ばれた。