メガトレンドを捉えるプロセスも興味深い。演繹的なアプローチで、さまざまな分野の専門家を揃えた研究所において、数十年単位のメガトレンドを予測する。それと同時に、グローバル各地の拠点で顧客から引き出した要望を基に、製品や技術の将来像を描くという帰納的なアプローチのプロセスも運営している。

 この成果は語りきれないが、典型的な成功例として低公害型ディーゼルエンジンの開発が挙げられる。2006年の初出荷以降、ボッシュのエンジンは世界のディーゼル車に採用され、事実上の業界標準になっている。これはまさに、メガトレンドで未来を読むとともに、顧客から未来を描く視点で情報を引き出すことができる能力によるところが大きいのだが、具体的なニーズありきではなく、ボッシュが描いた技術進化のロードマップが先にあり、そこに顧客からの要望を取り入れたことで、世界を席巻したのである。

メガトレンドと日本企業

 グローバル企業が読んでいるメガトレンドは、驚くほど当たり前のものだ。都市化や安全な暮らしといった社会動向に関しては、各社の特徴が出るが、共通項として、人口動態の変化という根底の潮流を捉えた上で、環境やエネルギーといったメガトレンドを押さえている。また、グローバリゼーションについても、新興国の力の増大や社会構造の歪みなど着眼点は異なるものの、それが進展することを前提にしている点は同じである。おそらく、メガトレンドを読んでいる、または読み始めている日本企業の視点とも大きく変わることはないだろう。

 一方で、メガトレンドを捉える、そして経営に活かす仕組みにはスタンスの違いが見える。グローバル企業では、メガトレンドに関する一連の取り組みこそがマネジメント層の「ルーチン」であり、企業経営の常態的な基部になっている。そのため、視点は同じでも深みが違う。企業全体への浸透度にも日本企業とは大きな差があるように思える。その結果が収益力にも反映される。

 未来に向けて、仕切り直しの一歩を踏み出そうとしている日本企業では、まだまだ数年に一度、中期経営計画の期間にあわせて将来環境を予測する、という日本企業にありがちな「イベントドリブン」な行動から脱却してはいないものの、メガトレンドを継続的に捉えるための組織を設立するなど、メガトレンドを経営の基部にしようとする試みが見られる。自社のスタンスを問い直すこの修正行動は、日本企業が新たな飛躍を手にできるかどうかの分水嶺となろう。

 そこで、次回はグローバル企業の動作からの学びを活かし、日本企業がメガトレンドを真に経営の基部とするために必要なことを考えてみたい。

参照)
DuPont Website Global / Japan ; Our Company(企業概要), Media Briefing, Investor News等
“Dupont Bets its future on Megatrends -an interview with Ellen Kullman (DuPont CEO)”, 2011年秋, Korn Berry Institute
Siemens Website Global / Japan ; Annual Report, Press Release等
Bosch Website Global / US / Japan ; About Us(企業概要), Annual Report, Press Release等