メガトレンドをベースに
他社に先んじるデュポン

 化学業界のリーディング・カンパニーであるデュポンは、創業200年を超える企業である。デュポンでは、次の100年を生き抜くために、「食糧増産の需要」「化石燃料依存からの脱却」「安全なくらし」「新興市場の増大」という事業に直結する4つのメガトレンドを重視している。

 一部を読み解くと、中国やインド、インドネシアなどの新興国を中心に見込まれる人口増大をベースに位置づけ、それに伴う食糧や飼料の増産の必要性や農作物の生産効率の向上に着目。また、人が日常生活で使うエネルギーの確保を注視し、再生可能エネルギーやバイオ燃料などの分野にも可能性を見出している。さらには、人間や環境の保護、特に、災害や紛争などの際に、消防士や兵士を守るための技術や製品を中心としたプロテクション(安全保護)に事業成長の機会を見込んでいるようである。

 デュポンの将来を左右するメガトレンドは、研究所や外部有識者などを巻き込み、長い時間をかけ継続的に検討を積み重ねた結果であろう。また、彼らが重視しているマネジメント層の多様性によって、多面的な視点から磨き上げられたことが推察される。特筆すべきは、このメガトレンドを、マネジメント層だけにとどめるのではく、世界中の従業員に浸透させていることだ。時にはCEO自らが、着目するメガトレンドと企業の方向性を語りかけるなど、時間とコストをかけてまでも世界各地で丁寧に説明を重ねていることから、全社の意識統一を大事にしていることが見受けられる。

 そして、メガトレンドから将来のビジネスチャンスを見極め、積極的な新事業の「種」の買収や研究開発費の傾斜配分を行っている。その一方で、自社にとって将来性が低い事業については、たとえ歴史ある事業であっても、また、現時点で利益を出している事業であろうとも売却を進めるなど、リスクをとって事業領域をシフトしていることがうかがえる(*)。他社に先んじることで、企業としての持続可能性を高めるとともに、高い事業収益性を維持しようとしているのがデュポンという企業の行動特性といえよう。


*「変化を加速するデュポンの経営戦略」化学工業日報2012年9月7日