これは残念な結果である。アナリストは、企業に対してイノベーションにより多く投資するよう促す恰好の立場にあるからだ。アナリストの役割はつまるところ、企業の取り組みの真価を投資家に説明することである。彼らこそ、長期的な投資を大胆に行う企業を声高に称賛することで、その市場価値を高め鼓舞すべき存在のはずなのだ。

 にもかかわらず、アナリストたちは別の角度からもイノベーションを阻害している。経営陣の脳裏には、マイケル・E・レイナーとムムターツ・アーメドが呼ぶところの「手強い財務指標」を重視せよ、という声が鳴り響いているが、アナリストはその掛け声に一役買っている。手強い財務指標とは、ROA(総資産利益率)、CFROI(投資に対する現金収益率)、EVA(経済的付加価値)であり、収益を分子、資産を分母とする。経営陣は、多くの事柄を左右するこれらの指標の比率が下がらないよう懸命に努力する。その近道は、困難な市場を諦めたり、資産を減らしたり、コストを削減したりして、分母を小さくすることだ。多くの経営者が、これらの安易な方法を実行してしまう。

 これは、企業の長期的な展望にとっては望ましいことではない。レイナーとアーメドがHBR論文「真に偉大な企業が実践するシンプルな法則」で示しているように、コストや資産を圧縮しても真の成功は得られない。したがってアナリストはある意味、「コモンズの悲劇」(個々人が自己の利益のみを考えて個別に行動することで、集団で共有すべき長期的な利益が損なわれる事態)を招いている。つまり企業に短期的な利益を要求することで、長期的な成功――すべての投資家が望んでいること――を難しくしているのだ。

 アナリストや「手強い財務指標」の圧力に対抗する唯一の方法は、「真に偉大な企業を目指さねばならない」と全社的に理解させることだ。たしかに財務指標は重要だが、より肝心なのはそれを向上させるために何をするかである。真に卓越した企業は、「コスト低減よりも売上増加を重視する」という困難な道を選んでいる。それは多くの場合、革新的な製品やプロセス、サービスを生み出す代償として高コストを甘受するということだ。

 だから、アナリストを気にするのはもうやめよう。それが、アナリストを心から喜ばせる唯一の方法かもしれないのだ。


HBR.ORG原文:Analysts Want You to Innovate, Except When They Don’t October 10, 2013

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アンドリュー・オコネル(Andrew O'Connell)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のエディター。著書にStats and Curiosities: From Harvard Business Reviewがある。