●前向きな姿勢になるよう促す
 対話型コーチングでは往々にして、部下が不満を挙げ連ねることに夢中になってしまう場合がある。「人脈づくりにもっと時間を費やしたいのに、その余裕がありません。成果物を仕上げようとするだけで精一杯なんです。業界のセミナーに参加したいと強く思っているのですが、締め切りに追われている限りとても無理です」。

 このような会話は一時的に不満のはけ口となるが、解決策は生まれない。少し時間をとって部下の不満を認識したあとで、それをやり過ごす術を考えるよう促すとよい。次のような質問が有効かもしれない。「参加したい活動のうち、自分の知識を補強しながら会社にも価値をもたらす、という可能性が最も大きいのはどれですか」「毎週2時間、スキルアップの取り組みを予定に入れることはできますか」「どんなスキルや人間関係があれば、成果物を仕上げる能力が向上しますか」「スキルアップに充てる時間を確保するために、チームがもっと効率よく動く方法はあると思いますか」

●相手の説明責任を明確にする
 スキルアップのための計画を策定・実施する際に、部下の説明責任を明確にすることも重要だ。説明責任によって対話型コーチングのプラスの影響は強くなり、コーチングが組織の有効性に欠かせない正当な手段になる。たとえば部下が、特定のスキルを伸ばすために研修プログラムを探したい、とあなたに申し出たとしよう。その計画に重みを与えるために、適切なプログラム、費用、職場からの離脱時間などに関する情報を、特定の期日までに報告するよう促すとよい(そしてもちろん、あなたはその情報にタイムリーに対応する必要がある)。

 部下へのコーチングを通して、リーダーはチームメンバーとの絆を深め、部下に当事者意識を持って学ぶよう促すことができ、実力を最大限に発揮するために必要なスキルの習得を助けることができる。そして、それらは気持ちのよい行為でもある。先月に上海で私が主導したワークショップで、ある企業幹部はコーチングのエクササイズを「バンジージャンプのように感じた」と述べた。嬉しいことに、会場に到着した時にはおとなしくて疲れ気味に見えた彼は、コーチングを経験した後は終始笑みを絶やさなかったのだ。しかもコーチングの体験によって目に見えて元気になっていたのは、彼1人ではなかった。

 対人関係におけるこの飛躍を、ぜひ体験していただきたい。部下の成長を触発する対話型コーチングのスリルに、きっと魅せられることだろう。


HBR.ORG原文:You Can’t Be a Great Manager If You’re Not a Good Coach July 17, 2014

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モニク・バルコア(Monique Valcour)
フランスのEDHECビジネススクール教授。経営学を担当。