●相手の話に深く耳を傾ける
 こちらが重要なことを伝えているのに、相手が何か別のことを考えていたら、どんな気分になるだろうか。これはよくある経験だ。対照的に、相手の話に完全に集中し、積極的かつ虚心坦懐に耳を傾ければ、より豊かで協調的な対話が生まれる。対話型コーチングは、「今月はどの部分で成長したいですか」といった質問から始めるとよい。どんな言葉で尋ねるかよりも、対話への姿勢のほうが重要だ。心にわだかまりをなくし、誠心誠意耳を傾けよう。相手が心を開き創造的に思考できるよう、対話をうまく展開するのだ。

●答えを押しつけず、問いかける
 マネジャーは高度な専門知識を持つが、それを往々にして指示という形で共有することに慣れている。これは、プロジェクトの行程を明確にする時や、部下が助言を求めてきた場合には問題ない。しかし対話型コーチングでは、答えを提示したいという衝動を抑えることが肝要だ。あなたが辿ってきた道筋と、部下が進んでいる道は同じではない。答えではなく自由回答形式の質問こそ、コーチングの手段である。あなたの導きによって、部下が自分の目標と課題をみずから明確にして、答えを自分で見つけ出せれば、コーチとして合格だ。問いかけられ、みずから考えることで、人は優先順位を明確にし、最も重視することに沿って戦略を立て、その実行に尽力するのだ。

●相手の進歩を実現させるために、協力体制を築き継続的に支援する
 コーチの役割は答えを提示することではない。ただし、チームメンバーのスキルアップとその戦略を支援することは不可欠である。たとえば部下が、こんな申し出をしてきたとしよう。自社のサービスをエンドユーザーがどう体験しているのか、もっと深く理解したい。そのために来週、サービスの実施チームに同行して現場を視察し、エンドユーザーに聞き取り調査をしようと思う。それを記事にして、社内ウェブサイトのブログに載せたい――。あなたは、提案が彼女と組織の双方にとって有意義だろうと認める。

 ここで大切なのは、(ただ許可するだけでなく)彼女に計画を遂行するうえで必要な権限、余地、リソースを与えることである。そして実行を支援するだけでなく、従業員の自主的な学習と進歩の一例として彼女の記事を大々的に取り上げるとよい。信頼を築きコーチングをより効果的にするためには、継続的な関与が欠かせないのだ。部下の進歩の取り組みを後々まで支援し続ければ、コーチングはそれだけ実り多いものとなる。そしてリーダーに対する部下の信頼は増し、双方の意欲が高まる、という好循環が生まれる。