●「何をしてはいけないか」ではなく、「代わりに何をするか」を決めておく
 自分で決めた量を食べ終えたあとは、どうすべきだろうか。複数の研究によれば、ある行動(クリスマスのお菓子に手を出すことや、何であれ自分が誘惑にかられること)をやめようと努力する場合、その行動を「しない」ことだけに意識を集中するのは最悪の選択肢であるという(「クッキーをもう1切れ食べたいと思っても、手を出さないようにする」など)。残念ながら、私たちのほとんどはこれをやってしまう。

 オランダのユトレヒト大学の研究者らが発見したところによれば、ある行動を「しない」ことにフォーカスすると、「リバウンド」効果を招いてしまい、禁じたはずの行動を以前より頻繁にするようになる(英語論文)。思考抑制に関する研究によれば、何かを考えないようにいつも気をつけていると(「シロクマのことは考えるな!」など)、むしろよけいにそれを想起してしまう。同様に、抑制すべき行動のことばかり意識していると、それを求める気持ちが強くなってしまうのだ。

 この危険を避けるためには、誘惑が生じた時に「代わりに何をするか」をあらかじめ決めておくのがポイントだ。たとえば「クッキーをもう1切れ食べたくなったら、水を1杯飲もう」というように代替行為を用いることで、衝動をやり過ごしやすくなる。

●よく味わう
 よく味わうことは、好ましい体験を助長し持続させる方法の1つである。ダークチョコレートの繊細な味わいや、濃厚なチーズの鼻に抜ける刺激、クリスマス・クッキーのバターの風味などを、時間をかけて堪能しよう。これは、嬉しい出来事が起きた時に、その喜びを余すところなく引き出すという行為だ。何であれ、ひと口で飲み込むことはやめたほうがいい。カロリーは変わらないが、風味はほんの少ししか味わえない。ミーティングなど、同僚とやり取りしている最中はなるべく何も食べないようにしよう。会話に集中していると、何を口に入れているかさえ意識しなくなることも多いからだ。

 ホタテ貝のベーコン巻きやマッシュルームの肉詰めを丸ごと口に放り込むのではなく、時間をかけて、意識を集中しながら少しずつ食べるようにすれば、空腹が満たされるだけではない。研究によれば、そのほうが幸福度も高まるのだ(英語論文。チョコレートを食べるのにかけた時間と、食べる際に感じた幸福度には相関が見られた) 。幸福こそ、祝祭日にご馳走を用意し楽しむ理由そのものではないか。

 意志力は筋肉と同じだ。使いすぎると役に立たなくなるが、時間をかけて強化することも可能なのだ。

 今日、オフィスで食べ物の誘惑に抵抗する能力を高めておけば、強くなった意志力は明日に仕事で役に立つかもしれない。先延ばしをやめる、短気を抑える、退屈な作業の途中でウェブをブラウズする誘惑に抗う、といったことだ。いま意志力を少しばかり鍛えておけば、年初の抱負に取り組むのもそれだけ楽になるはずである。


HBR.ORG原文:A Three-Pronged Strategy for Avoiding Office Weight Gain  November 12, 2013

■こちらの記事もおすすめします
意志力や自制心は長続きしない
朝型の人、夜型の人、自制心のゆるむ時間帯

 

ハイディ・グラント・ハルバーソン
(Heidi Grant Halvorson)

コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。