考え抜かれた文章は
読み手の頭に自然に入る

 次に素晴らしいと思ったのは、本書は順を追って読んでいけば、きちんと理解できる構成になっていることです。本書で紹介されるデシジョン・ツリーとゲーム理論は、もっとも単純なモデルから丁寧に説明し、より現実に近い複雑な状況の説明に複雑なモデルが紹介されますが、最初から読むことで自然と理解できるようになっています。

 最後に、本書にはあいまいな表現が一切ありません。たとえば、以下の一文をご覧ください。

「意思決定の質を左右する重要な要素は、目的の適切さ、選択肢の目的を満たす程度、能力や情報の限界を考慮すること、に分けられる。能力や情報の限界を別にすれば、目的が適切に設定される限り、目的に最も合う選択肢を選ぶ合理的意思決定は、最も質の高い意思決定といえる。その意味で、合理的意思決定の経験と練習を積むことが質の高い意思決定につながる。」(15頁)

 複数の意味が取れる言葉を使わず、前後の文章が論理的につながっているのがわかります。書き手が内容を熟知しているから読み手に伝わる、と言ってしまえば元も子もありませんが、熟考を重ねて書かれた文章は、機能的で美しいとさえ思えます。

 論旨は面白いのに読みにくいと思う文章がありますが、論旨がつまらないけど読みやすいと思う文章はあまり遭遇しません。本書は「質の高い意思決定」を学ぶ格好の教科書になっており、読み手が最後まで読むことで確実に理解できるように書かれています。その意味で、論旨がすばらしく、かつ読みやすい本です。(編集長・岩佐文夫)