ハーバード・ビジネススクールでファイナンスを教えるミヒル・デサイ教授は、この分野に関する私の先生だ。彼によれば、企業のキャッシュ創出力を測る重要な指標は、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」(CCC)である。これは、在庫回転日数と売上債権回転日数(顧客から代金を回収するまでの日数)の合計から、仕入債務回転日数(仕入先への支払いにかかる日数)を引いた数字だ(CCCが短いほど資金繰りに優れていることになる)。ウォルマートやコストコなどの超効率的な小売企業は、CCCを1桁台にまで下げている。それだけでも見事だが、アマゾンの2013年のCCCは実にマイナス30.6日であった。

 CCCでアマゾンに匹敵する唯一の企業はアップルで、2013年の数字はアマゾンを上回る-44.5日であった。このこと自体、現象として興味深い。デサイによれば、過去に多額のキャッシュを生み出してきた企業はたいてい、自社の製品・サービスに病みつきとなっている顧客、あるいは非常に忠実な顧客を持つ、ハイテク以外の業界――タバコ、ゲーム、食料品など――に見られた。しかしいまや、変化の激しい市場で2社の最先端企業がキャッシュマシーンと化している。

 アマゾンの場合、キャッシュはすべて、継続的な急成長をまかなうために使われている。借り入れや株の発行をしなくても、新たな分野への進出と製品・サービスの改良のためにキャッシュを使い続けることができる。「ベゾスに対する一般的な見方は、顧客にとても献身的で、株主を重視していないというものだ」とデサイは言う。「しかし実際には、そうではない。彼は非常にユニークかつ思慮深い方法で目標を達成するための、経済的に細かく調整されたメカニズム(キャッシュ創出力)を持っている」

 これは、HBR発表による2014年版「世界のCEOベスト100」のトップにベゾスが輝いた理由の1つである。ただし今後もそこに君臨し続ける保証はもちろんない。彼が行っている膨大な投資が実を結ばなければ、アマゾンは厄介な状況に立たされるだろう。しかし、これほどのキャッシュの流入が今後もしばらく続けば、株主を含む外部がどう考えようと、同社は新たな実験に着手し、失敗から学び、前進し続けることができる。したがって〈ファイアフォン〉のような明らかな失敗も、危機ではなく学習経験にできるのだ。

 アマゾンがいまのやり方を続けるためには、キャッシュ創出力を今後も維持することが不可欠だ。同社は四半期報告書で毎回のように、自社の「豊富なキャッシュを生み出す営業サイクル」を、巧みな在庫管理の賜物であるとしている。「当社の高い在庫回転率は、サプライヤーへの支払い期限が来る前に顧客から代金を回収していることを意味します」というのがお決まりの説明だ。

 しかし実際には、アマゾンがウォルマートやコストコよりも際立っているのは在庫管理ではない。ウォルマートの在庫回転率はアマゾンとそう変わらず、コストコは品ぞろえを限定することで、アマゾンよりも大幅に速く在庫をさばいている。さらに顧客からの代金回収も、両社はアマゾンより早い。アマゾンが際立っているのは、サプライヤーへの支払い期間が極端なまでに長いことだ。モーニングスターのデータによる2013年の支払い期間は、コストコの30.1日、ウォルマートの38.5日に対してアマゾンは95.8日なのだ(英語サイト)。

 サプライヤーはこの状況にいつまでも甘んじてはいないだろう、とする意見もある。実際に、最近のアマゾンの四半期報告書では支払い期間の短縮も見られ、キャッシュ創出の強みも減っているように思われる(同社の事業は季節にかなり左右されるため、四半期の数字は上下が激しい)。この傾向が今後常態化するのかどうか、まだ判断は尚早だが、投資家の懸念材料としては十分である。今年のアマゾンの株価失速に対する説明として、堅調なキャッシュフローを維持できない懸念こそ、「低い利益率に株主がいら立っている」という説よりも妥当ではないだろうか。


HBR.ORG原文:At Amazon, It’s All About Cash Flow October 20, 2014

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ジャスティン・フォックス(Justin Fox)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』エグゼクティブ・エディター