「仕組み化」で効果を生む

 レバレッジを効かせた経営に必要なもう一つの要素が、「仕組み化」です。どんなに素晴らしいアイデアや取り組みがあっても、現場の一人ひとりがそれぞれ汗をかいているだけでは、効果は限定的です。

 新しいことを生み出したならば、それを高いクォリティで、効率よくできるようにする。野中郁次郎・一橋大学名誉教授の言葉を借りれば「クリエイティブ・ルーティン」です。新しいことをやって仕組みに落とす、新しいことをやって仕組みに落とす、の繰り返しです。

 そのためには日々の現場や顧客との接点から生まれる知的資産をプロセス化して、誰もが実践できるようにルールブックに落とし込む必要があるわけですが、日本企業はこれを不得手とする傾向があります。決まりきったことを繰り返すためのマニュアル化はできても、ある種の逸脱を許容して進化させるのが苦手のようです。

「カイゼンなら得意だ」と言う方もいるでしょう。しかし、カイゼンは今やっていることの効率を上げるためのもので、そこにクリエイティブはありません。同じことをやり続けるだけでは成功確率は上がっても、大化けすることはないのです。

 そのクリエイティブ・ルーティンを実践しているのがローソンです。

 地域の特性や、病院、大学、郵便局などの出店形態に応じた個性的な店づくりで知られるローソンは、各店で顧客に密着した個性的な店づくりを進めています。顧客に必要とされる、喜んでもらえる店をつくろうと、現場でさまざまな工夫や施策が行われています。実験的な要素も多く、無駄もあるでしょうが、各店の取り組みの中から良いものを仕組み化して全体で共有することで、サービス品質を上げて、ホスピタリティを実現しようとしているのです。これは、コンビニの概念を変える挑戦です。

 クリエイティブ・ルーティンはホームランを狙うものではありません。一つひとつは内野安打やバントヒットのようなものでも、10個揃えば全体のレベルの引き上げにつながるものを集めて、仕組みに落とすものです。天才的なひらめきを持つ人や、特別なチームでなければできない仕事ではなく、現場の一人ひとりが自分の業務をもう一度見直したり、業界の常識を疑ってみたりすることで、創造は生まれます。

 ただ、そのためにはトップが「効率を上げろ」の一点張りではだめです。新しいことに失敗はつきものですから、ある程度は許容しなければ、現場は委縮してしまう。賢い人ほどリスクをとらずに、過去の成功の方程式の中でしか動かなくなってしまうのです。

 同じことをやっていてもあなたは評価されない、今やっていることを一つずらすことに取り組みなさい。それで失敗してもまだチャンスはある――トップがそうメッセージし続けることで、本当に優秀な人材がクリエイティブに挑戦する文化が組織に生まれるはずです。