3.助言を求めれば、相手はあなたの目的を熱心に擁護するようになる
 対立する立場にある人に助言を求めれば、相手を自分の支持者に変えられる。だれかに助言を与えることは、自分の時間とエネルギーを投資する行為だ。あなたに助言を与えた相手は、その助言の正しさを証明する権限を託されたと感じ、あなたの目的の擁護者となるのである。

 このことを示す格好の実例は、我々が教えるMBAコースの受講生であるクララの体験だ。彼女は自分の加入している医療保険ネットワークに含まれていない外科センターで手術を受け、1万8000ドルという高額の請求書を受け取った(執刀医自身はネットワーク内の医師だったにもかかわらず)。

 この請求書をめぐる交渉で自身が取った戦略について、クララはこう書いている。「私はフラン(看護師)に電話しました。内心では、この問題は彼女のミスが原因だと考えていました。でもそれを指摘するのではなく、この問題をどうすれば解決できるかフランに助言と指南を求めたのです。彼女の性格は知っているので(自分の領分をしっかり管理し仕切りたがる)、外科センターの担当者との交渉を助けてもらうことにしたのです。それを任せたことで、フランは自分が重要な役割を担っていると感じ、そこから先は彼女がやってくれました」。看護師がクララの擁護についたため、彼女は手術費の減額に成功しただけでなく、驚いたことに全額の保険適用まで勝ち取ったのである。

 このアプローチは、助言を求めることの3つのメリットをすべて実現している。第1に、看護師は自分の権威を認められて喜び、会話の目的はたちまち議論から問題解決に変わった。第2に、看護師はクララの立場になって状況を見つめ、苦境に陥ったクララに同情した。第3に、看護師は権限を託されたと感じ、解決に向け力を尽くしたのである。

 このアプローチは仕事の交渉においても役に立つ。筆者の1人アダムは、初めて教授職を求める交渉を行った時、面接で話した教授の1人に助言を求めた。その教授はすぐに、きわめて重要な情報(なんと大学側の給与の留保価格まで)を与えてくれたばかりか、学部長に非公式に働きかけ、アダムが使える研究リソースを増やすよう取り計らってくれた。さらに、アダムが希望する講義日程に合わせて自分の講義日程を調整してくれるほどに、強力な味方となったのである。

 助言を求めるという単純な行為によって、好感度が高まり、相手はこちらの視点に立つようになり、強い支持を獲得できる。それは重大な金銭交渉であれ、提案事項への賛同を求める時であれ有効だ。このアプローチの美点は、負担や犠牲をほとんど伴わないことだ。ターゲットを絞って助言を求めることで、敵を味方に変えられる場合がある――次回交渉ごとを計画する時は、このことを念頭に置いておこう。


HBR.ORG原文:Win Over an Opponent by Asking for Advice  June 27, 2014

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ケイティ・リルエンクイスト(Katie Liljenquist)
ブリガム・ヤング大学マリオット・スクール助教授。リーダーシップおよび組織戦略を担当。意思決定と対人関係を研究している。

アダム・ガリンスキー(Adam Galinsky)
コロンビア大学ビジネススクールのビクラム・S・パンディット記念講座教授。経営学部長も兼務する。専門はリーダーシップ、権力、交渉、意思決定、倫理。