要注意なのは、他人のことを絶対的な善人で潔白だとか、完全な悪人で責めを負うべきだなどと言う相手である。こういう言動が示しているのは、交渉に必要なマインドセットを持っていないということだ。この人物の望みは、悪人に罪を白状させ罰することなのだ。そしてあなたがこの相手と対立しているのなら、悪人に分類されている可能性がある。あなたが交渉をやめることで、あなたを罰する機会を相手から奪うことができる。もし交渉を続ければ、そのプロセスは苦痛に満ちたものになるだろう。また、有意義な譲歩を得られる見込みもない。相手はあなたを、譲歩に値する人間とは見なしていないからだ。

 どんなに優れた交渉人であっても、これら2種類の人が相手では双方にメリットをもたらす結果は得られない。相手の根本的な目的は合意ではないからだ。こうしたレアケースでは、交渉に関するどれほど最高のアドバイスや処方箋でも奏功しない。その代わりに実践すべきは、次の4つのステップである。

●現実的になる
 彼らは変わらない。いかなる交渉戦略を取っても、この種の人を変えることはできないのだ。この場合にあなたが目標とすべきは、利益をできるだけ守って(または損失を最小限に抑えて)切り抜けることだけである。

 たとえばあなたが物件のオーナーで、家賃が滞っている賃借人がいたとしよう。その人物が感情的だったり、不合理だったりしても、心の底では「アパートを追い出されたくない」と思っているのならば、交渉する価値がある。相手は最終的には自分の利益を守るように行動するだろう。一方、相手が友好的な態度と敵対的な態度を交互に繰り返し、自分の状況を隣人や資産管理人のせいにするようなら、交渉する価値はない。最大の関心はアパートではなく、周りの人々を支配することだからだ。

●譲歩をやめる
 譲歩の目的は、合意を達成することだ。合意が不可能である以上――あなたがどんなに大きく譲るつもりであっても――時間を無駄にすべきではない。それでも損失を避けられる保証はなく、ここでの目標は損失を最小限に抑えることだ。たとえば、あなたのチームに合意を得られないタイプのメンバーがいて、あなたはすでに何度も譲歩を繰り返し、相手の仕事の一部を引き受けているとしよう。しかもなお、その人はあなたとの約束を果たせないでいる。もう十分だ。あらゆる手段を講じてプロジェクトを終わらせ、問題の相手にはこれ以上何の譲歩もしてはならない。

●相互依存度を弱める
 こうした相手との相互依存関係を弱めるために、あらゆる手段を実行しよう。今後は継続的に、何であれその人を頼りにせず、借りをつくらないようにしていくのだ。たとえばサービスに対しては一括払いで精算し、分割払いにしないということだ。プロジェクトであれば、全工程をその人と協働するのではなく、複数の工程に分け個々人で遂行していくほうがいい。そういう相手とどうしても協働を続けなければならない場合は、こう考えておこう――幼い子どもたちでも、それぞれに別のおもちゃを与えれば、隣り合って行儀よく遊んでくれる。

●すべてを公にして、相手に説明責任を持たせ、可能なら第三者を巻き込む
 非公式の話し合いは、できれば避けたい。すべてをオープンにし、何であれ書面に残そう。そして説明責任の次元を引き上げ、相手が自分の義務を果たさなかった場合に上層部が動かざるをえないようにしよう。可能であれば、第三者として調停人や仲裁人、判定者などを利用するとよい。

 覚えておいてほしい。100の交渉のうち99までは、交渉相手の根本的な目的には理があり、正しい戦略を用いて粘り強く交渉すれば、最後にはそれを突き止めることができる。交渉の秘訣とは結局のところ、「相手が何を求めているか」と、「それが相手にとってどの程度価値があるか」を見極めることなのだ。しかし本記事で述べたようなレアケースでは、相手が求めているのはあなたを支配することや罰することであり、それは価値とは何ら関わりがない。そういう相手とは関係を持たず、自分の仕事に専念するのが得策ではないだろうか。


HBR.ORG原文:Two Kinds of People You Should Never Negotiate With  June 18, 2014

 

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ジュディス・ホワイト(Judith White)
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスの客員准教授。経営学を担当。