言葉の定義まで見直しを進めた無印良品

 次に紹介するのが、38億円の赤字に陥った無印良品の組織を抜本的に改革し、業績をV字回復させ、過去最高の売り上げとなる1620億円を達成した松井忠三氏の取り組みである(注)。無印良品の店舗で使っているマニュアル「MUJIGRAM(ムジグラム)」は、一般のマニュアルとは異なり、社員がみんなで作りあげる点や随時改善を繰り返していく点などに特長がある。またそれとは別に、店舗開発部や企画室といった本部の業務をマニュアル化した「業務基準書」と呼ばれるものも存在する。

 これらのマニュアルは、個々人の経験や直観に頼っていた業務を「仕組み化」することで、ノウハウとして蓄積させることを可能にし、チームの実行力を高水準に引き上げるために作られたものである。「経営から商品開発、売り場のディスプレイや接客まで、すべての仕事のノウハウ」が書かれている。そしてこの無印良品の仕組みの軸となる「マニュアル」は、まさに本質を問うことで作られているのである。そこでは、「インナー」「POP」「ウインドウ」といった簡単な用語も解説されている。というのも、無印良品には学生のアルバイトも多いため、自分達が普段使っている言葉の意味が通じない場合がある。受け取り方が人によって異なると、それは仕事をする際の『基準』にならない。そのため、マニュアルは徹底的に具体化しなければならないという。

 たとえば、「商品を整然と並べる」と言っても、「整然」のとらえ方は人によって異なる。したがって、それを統一させるために、「整然とはどういうものか」から定義し直したのである。結果、MUJIGRAMでは、「整然」とは、「フェイスUP(タグのついている面を上に向ける)、商品の向き(カップなども持ち手の向きをそろえる)、ライン、間隔がそろっていること」と定義づけた上で、この4つのポイントがどういう意味なのかを、写真入りで説明している。これによって、読んだ人は学生のアルバイトでも、他社から転職してきた人でも、「整然とは何か」、その本質を理解することができ、それに沿って行動することが可能になるのだ。

 無印良品は、「整然とは何か」と問いを立てることで、 “整然”の本質観取を行っていたのである。つまり、「商品を見栄え良く見せる」という目的を実現するために、「整然」というコトバの重要なポイント(本質)を取り出して、誰もがそれを基準として同じように行動し、店舗ごとにばらつきがないよう、高い水準で行動できるようマニュアル化した。こうした本質規定のマニュアル作成をすることで、リーダーの能力に依存することなく、あらゆる店舗でのパフォーマンスを高めることが可能になったのである。