音と画像で育った世代へのクリエイティブとは

藤田:一方で、アウトプットの段階でのクリエイティビティという観点ではどうですか? インサイトを把握したとして、それにのっとったストーリーをつくるには、クリエイティビティが必要ですよね。

シュルツ:ええ。インサイトなくしてはストーリーはつくれないので、やはりまずは、お客さまが何を望み、どう考えているのかを理解すること、言い換えればインサイトの把握が先、ということです。

 その上で、クリエイティビティの観点から、今我々が見逃している局面についてお話すると、いわゆるデジタルを当たり前のように使いこなす世代がますます増えている、ということです。

 私も含めて、大人になってからデジタルに触れた世代は、今でも言葉がコミュニケーションのベースになっています。しかし新しい世代である彼らが生きる世界は、当たり前のように常にスクリーンがそばにあり、音や画像で育っているといっても過言ではありません。そういう世代に対してクリエイティブを届けるとき、あるいはコミュニケーションを図るとき、その違いを見落として自分たちの常識のままに言葉だけで伝えようとしてしまうのは問題だと思います。

藤田:確かに、クリエイティブの形は変わるべきですね。

シュルツ:それを私は、ある写真を見て実感しました。それはナイジェリアの女性が携帯電話を耳にあてて、何かを話している写真で、普通に見ると母親や家族か友人とでも話しているように見えます。ですが彼女は銀行とやり取りし、オンラインバンキングをしていたのです。

藤田 康人氏(ふじた・やすと)
インテグレート代表取締役CEO。 1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素株式会社に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、同市場を確立した。2007年5月、IMCプランニングを実践する日本初のプランニングブティックとしてインテグレートを設立。近著に『THE REAL MARKETING-売れ続ける仕組みの本質』(宣伝会議)。

 その写真の解説によると、彼女は文字が読めないそうですが、それでも画像や数字が分かれば銀行の指示に従って、取引ができるのです。今でもナイジェリアにはさまざまな民族がいて、175くらいの異なる言語が存在しています。でも、音と画像で育った世代は、言語の違いによらずにある程度のコミュニケーションを図れると言えます。

 我々は今まで、文字の読める人を対象に、言葉をベースにコミュニケーションを考えてきました。でも、その常識も改めなければいけませんね。

藤田:では最後に、これから企業は何に注力し、どのような視点でマーケティングを進めていくべきか、お聞かせいただけますか。

シュルツ:まずは、企業内の各所にいろいろな形で蓄積されたデータを統合し、プラットフォームを構築するのが第一歩です。データの一元化ができたら、それを有効活用して、お客さまの視点でのコミュニケーションを探っていくのが次のステップになります。それができて初めて、「『IMC3.0』を実践している」と言えるのでしょう。すべきことは見えているのですから、いち早く実行に移した企業が抜きん出ていくのではないでしょうか。

※次回は11月12日(水)公開予定。

 

【連載バックナンバー】
第1回:IMC3.0の時代に必要なのはデータマネジメント
第2回:データから顧客インサイトは見えない