テスト・パイロットと宇宙飛行士は似ている

――ここからは宇宙に関するお話を聞かせてください。若田光一さんに続いて国際宇宙ステーションに行くことが決まったときの、油井さんの率直な気持ちをお聞かせください。

 私は、小さいころからずっと宇宙を目指してきましたし、宇宙飛行士の候補者に選ばれてからは宇宙飛行のための訓練を受けてきたので、やっと来たかという気持ちでした。ただ、楽しみなことが大部分を占める一方で、まったく知らない世界で自分がしっかりと仕事ができるのか、という不安も少なくないのが本音です。

 テスト・パイロットの仕事と宇宙飛行士の仕事はよく似ています。テスト・パイロットは、試作機ができたときに、その試作機が安全に飛べるか、計器類の正しく表示されているか、どのように操作すれば間違いを犯さないかなどを、一つひとつ確かめていく仕事です。その結果として、手順書も作らなければなりません。普通のパイロットは、テスト・パイロットがチェックしたうえで作成した、「この手順通りやってください」という指示書を信じて、その通りに運用することになります。そのため、テスト・パイロットの責任は重大です。

 宇宙に当てはめて考えると、私が滞在する「きぼう」は試作機のようなものだと思います。宇宙に浮かぶ「きぼう」を運用するにあたり、本当に安全か、どのように運用すればいいか、使ってみておかしなところがないかを確認します。必要あれば改良し、手順書を書き直すというのは、テスト・パイロットとまったく同じ仕事なのです。

「きぼう」は完成したと言われていますが、細かいところは改良や修正を重ねているところです。たとえば、ロボット・アームの操作をする時に見る画面がありますが、表示される部分を少しずつ修正しています。その修正は、実際に計器に触れる宇宙飛行士の要請に基づいて行われます。仕事のやり方がテスト・パイロットと似ているのは、映画『ライトスタッフ』でも描かれたように、アメリカの宇宙開発がテスト・パイロットから始まっていることが理由の一つなのかもしれません。

――宇宙飛行士に指名されたことで、チームワークやリーダーシップを発揮するための準備もされているのでしょうか。

 私はコマンダー(船長)ではありませんが、リーダーの役割を果たさなければならない局面は必ずやってきます。特に「きぼう」の運用に関わるところは、他国の宇宙飛行士たちよりも詳しいので、コマンダーも私に任せてくれるでしょう。その時は、私がしっかりとリーダーシップを発揮したいと考えています。

 冒頭でお話ししたように、リーダーが何を考えているかわからないと、フォロワーもうまくサポートすることができません。だからこそ、機会があるごとにコマンダーと話をするようにしています。コマンダーの考えを把握しながら準備することで、宇宙に飛んだ時に、より良い仕事ができるはずだと考えています。

次回更新は、10月29日(水)を予定。