リーダー候補は明確に順位づけされている
自衛隊に受け継がれる「指揮の要諦」とは

 前回、飛行隊長になれることがほぼ決まっていると言いましたが、自衛隊では誰が次にリーダーになるのか、その順序が明確に決まっています。戦場という極限の状況を想定しているので、リーダーが指揮を執れなくなったら次、その人もダメだったらその次と、リーダー不在で組織が混乱しないようにできているんです。

 私が「宇宙飛行士になるために自衛隊を辞める」と上司に告げた時も、それを感じました。「飛行隊長の夢が叶うところまできたのに、本当にいいのか」と引き止められましたが、それでもいいと告げたら「そうか、それなら頑張りなさい」と、自分が思っていたよりもすんなり受け入れてくれました。

 それは能力を評価されていないということではなく、同じ水準で代わりを務められる人が常に控えている組織だからです。リーダー不在という最悪の状況には絶対に陥らない、完成された仕組みだと思います。だからこそ、上に立つ可能性がある人には、徹底的にリーダーシップとフォロワーシップが叩き込まれるのです。

――自衛隊で学んだリーダーシップ、フォロワーシップのポイントを具体的に教えてください。

 自衛隊には「指揮の要訣」というリーダーシップの鉄則があります。リーダーとしての重要なポイントは、まず部下をしっかりと掌握しておくことです。そのうえで状況を把握し、部下に対して明確な目標を示すことが必要です。掌握にも関係しますが、部下の能力を見て、どうすれば仕事がやりやすくなるかを考えることが求められるのです。

 また、「幕僚の心得」のようなフォロワーシップの鉄則もあります。結局のところ、指揮官が出す指示を理解するには、指揮官が何を考えているかわかっていなければなりません。そのためには、みずからが指揮官になったつもりで考えることが求められます。リーダーの立場に立って状況を分析し、自分なりの行動方針を探したうえで、その案をリーダーに提示するのです。つまり、フォロワーであってもリーダーと同じプロセスで考えることになり、それがリーダーシップを強化することにつながっているのです。

 ただし、あくまでも意思決定をするのはリーダーです。リーダーの決断と自分の考えが異なった場合は、すぐに自分の考えを捨て去り、リーダーの決定に従うのがフォロワーの極意ですね。

――自分の意見を通したいこともあると思いますが、引く「コツ」はあるのでしょうか。

 昔から私は、自分の意見は必ずリーダーに伝えるようにしています。それでもリーダーが異なる考えを示すということは、それなりの理由があるはずです。そのときはリーダーの意見を尊重しようと思ってやってきました。理由に納得できない場合はもう少し議論を重ねるかもしれませんが、基本的にはリーダーの意見に従うのが前提です。

 フォロワーは、自分の意見が通らなかったことを引きずってはいけません。リーダーが決定した意見を吟味し、その欠点を探すべきです。ただし、決してあら探しをすることが目的ではありません。少しでも欠点を補い、リーダーの考えをより良くするために自分ができることを考え、先回りして動くのが理想的なフォロワーだと思うからです。

 自衛隊では、リーダーに意見具申をするときにはルールがあります。それは、自分の意見の利点と欠点をオープンにすることです。さらに、欠点を欠点として投げ出してしまうのではなく、欠点を補うための方策まで言うべきだとされています。