雇用主と従業員の「同盟」に求められる他の側面と同じく、この優先対話権には法的な拘束力は必要ない。倫理的に破ってはならないという認識が、マネジャーと部下の間にあればよい。

 通常は雇用主のほうが従業員に対して力を持っているため、信頼関係の構築に向けて第一歩を踏み出すべきなのは会社側である。マネジャーは、「キャリアの目標について率直に話してくれる社員を、解雇することはありません」と宣言し、それを守る必要がある。会社がその言葉通りに行動すると従業員に信じてもらえたら、マネジャーは優先対話権のメリットとして、従業員に以下を示すとよい。

 第一に、従業員は業界における具体的なチャンスについて、マネジャーから率直なアドバイスを受けることができる。高度な信頼関係の下では、マネジャーは競合他社をけなしたり、従業員を引き留めるために言葉を弄したりはしないはずである。

 第二に、率直な話し合いをすれば、会社は従業員の現在の勤務状況を改善できるかもしれない。従業員が転職の可能性を事前に通知することで、会社側にはもっと当人に適した選択肢やオファーを検討し用意するための時間が与えられる。ライバル会社のオファーに匹敵する、またはそれを上回る条件を考える時間が数週間あれば、24時間しかない場合に比べ、対抗手段を講じるチャンスが大いに増える。

 第三のメリットとして、会社が説得力のある対抗策を提示できなかったり、従業員が結局は転職を選ぶことになったとしても、優先対話権は長期的な関係を維持するうえで役立つ。離職は円満に、両者にとって都合のよいスケジュールで行われる。これまで互いに果たしてきた義務や注いできた労力に、両者が敬意を表しながら別れることができるのだ。

 あなたがマネジャーならば、従業員に最後の任務を完遂してもらい、離職を計画的に管理することを選ぶだろうか。それとも、突然の離職に対し慌てて対応策を講じるほうがよいだろうか。

 あなたが従業員ならば、円満に離職して、会社のアルムナイ・ネットワーク(元社員のネットワーク)の一員として重宝されることを選ぶだろうか。それとも辛辣な空気のなかで去るほうがよいだろうか。

 優先対話権は通常のやり方とは大きく異なるが、まさにそれこそがポイントだ。雇用主と従業員との間に信頼が欠如している現状は、両者に痛手となっている。優先対話権を導入すれば、両者を信頼で結び、長期的で実り多き関係を構築する一助となるのだ。


HBR.ORG原文:Encourage Your Employees to Talk About Other Job Offers June 30, 2014

■こちらの記事もおすすめします
リンクトインに見る次世代プロフェッショナル人材の要件 杉本隆一郎(リンクトイン・ジャパン 日本オフィス代表代行)×石倉洋子
終身雇用を捨てよう リンクトイン創業者が語る新たな雇用形態

 

リード・ホフマン(Reid Hoffman)
リンクトインの共同創業者兼会長。シリコンバレーのベンチャー・キャピタルであるグレイロックのパートナーも務める。共著にThe Alliance: Managing Talent in the Networked Ageがある。

 

ベン・カスノーカ(Ben Casnocha)
起業家であり、人材マネジメントに関する講演を活発に行っている。リード・ホフマンとの共著に『スタートアップ! シリコンバレー流成功する自己実現の秘訣』がある。The Alliance: Managing Talent in the Networked Ageの共著者でもある。

クリス・イェ(Chris Yeh)
起業家、著述家、メンターであり、PBワークスのマーケティング担当バイス・プレジデント。ワサビ・ベンチャーズのゼネラル・パートナーも務める。The Alliance: Managing Talent in the Networked Ageの共著者。