ネガティブな物言いの代わりにIDEOで好んで使われるのは、「我々はどうすれば~しうるか?(How might we ...?)」という言い回しである。この表現を教えてくれたのは、現在セールスフォース・ドットコムの製品デザイン担当シニア・バイス・プレジデントであるチャールズ・ウォーレンだ。これは新たな可能性を前向きに追求するための言葉として、数週間のうちにIDEOで急速に広まり、以来定着している。

 拍子抜けするくらいに単純なこの3語の組み合わせが、クリエイティブな集団のあり方に関する我々の見解をほぼ言い表している。

「How(どうすれば)」は、向上が常に可能であることを表している。考えるべき問いはただ1つ、(できるかどうかではなく)いかにしてそれを実現するかなのだ。

「might(~しうるか)」という表現は、一時的にハードルを少し下げてくれる。大胆なアイデアや突拍子もないアイデアを、最初から自分で修正してしまうことなく検討できるようになり、ブレークスルーにつながるチャンスが増える。

「we(我々は)」と言うことで、課題への当事者意識が確立される。その課題はチームで取り組むべきものであり、さらには「わがチーム」の取り組みである、という意識が明確になるのだ。

 過去10年の間にIDEOで働いたことのある人や、ソーシャル・イノベーションのプラットフォームである「オープンIDEO」に参加した人なら、だれもがこの言い回しを聞いたことがあるはずだ。

 また我々は、アイデアを批評する言葉にも配慮している。HBRに寄せた拙稿(本誌2014年11月号「IDEO流 創造性を取り戻す4つの方法」)で説明したように、我々のフィードバックはたいてい「よい点は~(I like ...)」から始まり、「~だとよい(I wish ...)」へと移行する。単純な賛成や反対のみによって結論を出すことは控え、肯定的な発言から始めたのちに、1人称「私」を用いて提案する。こうすれば、助けになろうとして意見を述べていることが相手に伝わり、アイデアを受け容れてもらえる素地ができる。

 私たちは歳を重ねていくうちに、言葉の持つ真の力を忘れがちとなる。チームにおける言葉の使い方を改善すれば、それが組織文化に及ぼすポジティブな影響を目の当たりにすることになるだろう。

(原注:本記事は、筆者らの共著Creative Confidence: Unleashing the Creative Potential within Us All 〈邦訳『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』日経BP社〉からの抜粋である。)


HBR.ORG原文:Use Language to Shape a Creative Culture January 2, 2014

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トム・ケリー(Tom Kelley)
IDEOゼネラル・マネジャー。カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスおよび東京大学iスクールのエグゼクティブ・フェロー。デイビッド・ケリーとの共著にCreative Confidence(邦訳『クリエイティブ・マインドセット』日経BP社、2014年)がある。

デイビッド・ケリー(David Kelley)
IDEO創設者兼会長。スタンフォード大学機械工学科ドナルド・W・ウィッティア記念講座教授。同大学ハッソ・プラットナー・インスティテュート・オブ・デザインの創設者でもある。