しかし、新たなアプローチがある。これを私たちは「スマート・シンプリシティ」と呼んでいる。私たちがこれまで30年間、40カ国以上の500を超える顧客企業のお手伝いをするなかで開発してきたこの手法については、著書『組織が動くシンプルな6つの原則』(ダイヤモンド社、原書: Six Simple Rules: How to Manage Complexity without Getting Complicated)で詳しく解説している。「スマート・シンプリシティ」では、現代の組織の中心となるのは協働しあう個人だと考える。テイラー派は労働者個人個人は信頼せず、トップダウン型の細かく厳格な管理をめざして組織改編を設計する――メイヨー派が提唱した人間的側面からの取り組みによる緩和効果で多少改善されはしたが。これに対して、私たちは根本的に異なるアプローチを推進する。

 簡単に言えば、企業の生産性がもっとも高くなるのは、従業員の知性をうまく活用する――妨害するのではなく――ときである。6つのシンプルなルールが、旧来の「ハード」・「ソフト」両アプローチの制約を越える助けとなる。

1.従業員の行動を理解する: まず、従業員が何をしているか、なぜそうしているのか、を深く理解する。

2.協働の要を見つける: 協働を促進する要となる従業員や部門を特定し、彼らにそのための権限や利益を与える。

3.権限の総量を増やす: 既存の権限を移すだけでなく、新たな権限をつくり出す。

4.助け合いを仕組み化する: 互恵性(協働することにより互いに得をすること)を高める。

5.助け合いの結果をフィードバックする: 直接的なフィードバック・ループをつくり出す。

6.助け合った人に報いる: 個人およびチームにとって、透明性、イノベーション、高い志が最良の選択肢となるようにする。

 組織構造、プロセス、制度をいくら増やしても、従業員がビジネスの最前線で日々遭遇するさまざまな問題を防ぐことはできない。だから、組織構造、プロセス、制度を増やすのではなく、従業員の自律性を高めるとともに、従業員が互いに協働するよう促す――もっと言えば駆り立てる――ことが必要なのだ。このように解き放たれてはじめて、従業員は重要な判断をし、複雑なトレードオフのバランスをとり、新しい問題に対して創造的な解決策を生み出すことができるようになる。


HBR.org原文: Stop Trying to Control People or Make Them Happy  April 3, 2014.

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イヴ・モリュー(Yves Morieux)
BCGワシントン・DC・オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。BCG組織研究所所長。仏SKEMAビジネス・スクール修了、仏パリ政治学院DEA(意思決定分析、組織社会学)、英ストラスクライド大学PhD(法人マーケティング)。BCGフェローとして、ビジネスの複雑性増大の組織への影響に関わる研究を主導し、「スマート・シンプリシティ」アプローチを開発。世界の多国籍企業や公共機関に対し、戦略、組織両面にわたる変革を支援している。主要経済誌などへの寄稿やビジネス・イベントや大学での講演も多数行っている。

ピーター・トールマン(Peter Tollman)
BCG ボストン・オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。ケープタウン大学(南アフリカ)工学博士(PhD)、米コロンビア大学経営学修士(MBA withDistinction)。組織再編、ガバナンス再設計、企業カルチャーの変革、合併後の統合、企業価値向上・成長戦略、戦略・組織両面における構造改革をはじめ、幅広いテーマのコンサルティングに携わる。BCG組織・人材に関するエキスパート・グループの北米地区リーダー。

 

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