設計図を用いて人々の行動を緑から青に変える場合の粗筋について、野球とサッカーの比ゆで述べてみたい。野球通・サッカー通の方は、読み進まれる中で幾分不自然な想定が含まれている点に気づかれるかもしれないが、そこはむしろ目をつぶって、企業組織だったらどうなるかと連想しながら読んでいただければ幸いである。

 まず、緑の組織でうまく動ける人を野球がうまくできる人にたとえ、青の組織でうまく動ける人をサッカーがうまくできる人にたとえる。それぞれ緑の設計図と青の設計図で動ける人であるといいかえてもよい。

 現状の仲間は、みな野球のみをやっている緑の組織の人々だとしよう。最近、経験の浅い若手もワールドカップをにらんだ日本代表候補に選ばれて実戦にも登場し始めたというニュースに接したせいか、ある男がにわかにサッカーに手(足)をだしたくなったとしよう。といっても、サッカーは一人ではできない。どうするか?

 件(くだん)の男は、元来、緑の人であるから緑の人らしく、何でも自分たちでやってしまう自前主義の精神を発揮して、野球をしている仲間をサッカーに誘いこむという手をとることにした。ただ、現実はなかなか厳しい。男も含めて、皆、本格的なサッカーは殆ど経験していない。男が自ら仲間にサッカーの基本技を教えてサッカーに引っ張り込むしかない。実は、男自身、サッカーのルールの詳細やサッカーの基本技を完璧に身につけているわけではないので、本を読んだり講習会に出たりして自習するはめになる。

 しかし、ただサッカーを始めたというだけではさほど面白くない。ワールドカップをにらんだ日本代表候補選出が話のきっかけだからか、せめて、サッカーをもっとうまくプレイすることを目指したい。では、ただプレイするだけでなくうまくなるにはどうするか?

 うまくなる一つの方法は、お手本をみつけて観察し、まねすることだ。この方法を観察学習(obseravational learning)という。その際、テニスのような個人スポーツなら、自分と体格の似た選手をお手本にすればよいが、サッカーのようなチームプレイであれば、個人のお手本として自分がプレイしたい役割を演ずる選手を探すとともに、チームのお手本としてどこか強いチームが必要だ。個人のお手本がチームの一員であれば、明らかに個人の役割とチーム全体は分かち難くむすびついているので、お手本とするのに最適だ。そういう個人とチーム一体型のお手本をみてまねする(学習する)のだが、どのようにまねしていけばいいのだろうか?

 ここで、バンデューラの社会的学習理論(social learning theory)の抽象モデリング(abstract modeling)の知見を参照して「まね」の仕方を噛み砕くと、お手本たちの動きを観察したり話を聞いたり、あるいは記事を読み解いたりしながら、自分の中でイメージを作って言語化し、お手本たちの行動をガイドしているであろう設計図を描く。そしてその設計図を介してお手本のまねをして、ギャップを解消していくということになる。

 言うまでもないが、お手本が「これが僕の動きをガイドする設計図だよ」といって他人に渡せるようなものをもっているわけではない。だから、自分たちでジグゾーパズルを解くように想像力を働かせて設計図を描くことが必要だ。

 設計図は、全体として、WHY(価値観等)、WHAT(戦略等)、HOW(スキル等)がバランスよくカバーされていて、行動を多面的かつ効果的にガイドする機能を果たし得るものになっていることが求められる。その内容は、例えば、チームの方針や価値観や目標、戦略・作戦(基本フォーメーションおよびセットプレイなど)といったどの選手も参照する共通部分と、特定の役割に求められるスキル・動き方や連携の仕方や報酬を含む契約など、役割別に参照する個別部分に分かれている。

 さて、設計図を書いたら今度はそれを行動化する。つまり、頭の中で設計図を参照しながら、仲間の男たちと実際にプレイしてみるのだ。行動化の後、すぐに振り返りを行い、設計図と自分たちのプレイとのギャップをみつけて、そのギャップがなぜ生じているか原因を考えて、それをつぶす手を打つ。簡単にはつぶれないギャップもたくさんある。でも、そういうギャップを一つずつ解消していくと次第に全体としてのギャップが小さくなる。この過程でコーチを雇い助言してもらうのもいいだろう。

 このような努力を継続するにはモチベーションの維持も大切だから、インセンティブとしてのごほうびを用意するのも悪くない。もっとも、ギャップの解消を評価するという行為自体や、自分たちが上達しているという自己効力感がモチベーションにつながるのだが、たとえばソーシャルメディア上でギャップ解消シーンを撮影・掲載する形の認知などもろもろのインセンティブを工夫する余地はあるだろう。効果的なインセンティブがみつかればすかさず自分たちの設計図に組み込むことはいうまでもない。

 そうこうするうちに自分とチームのレベルがあがってくれば、お手本のチームや選手をアップグレードして、新たな設計図を描き、その設計図を行動化する新しいサイクルに移る。

 ここまで、件の男が緑の人だから自前主義で変革するという想定の話をしてきたが、自前主義にとらわれなければ、もっと手っ取り早い方法が二つある。男がサッカーをしているチームに移籍するという手と、サッカーチームを買収して連れてくるという手である。いずれも自前の変革の醍醐味がないのでここでは省略するが、企業組織の話であれば有力な青色化変革の手段として十分検討に値するだろう。