また、多くの国に展開するということは、それら各国に活動基盤を置いて法規制に対応し、キャッシュは複数通貨で持つことになり、また、人材も多様化することを意味する。経営機能の配置という観点から見ても、20世紀終盤の新興国台頭までは、本国(本社所在国)以外への組織拡大は、資源採取と販売拠点から始まり、コスト効率を求めて生産拠点を資源国や人件費の低い国に移すといった、まさしくサプライチェーンのグローバル化によって企業経営は複雑性を増した。現在では、マーケティングやR&D、本社機能までもがグローバルでの最適な配置を求めて展開されており、さらなる複雑化の様相を呈している。

 加えて、外部の環境要因も大きく影響する。経営を取り巻く環境は、政治や経済の世界的潮流から業界における技術動向まで幅広く、その影響が及ぶ範囲もさまざまであるが、その中で複雑性を捉えるという意味では、リスクという観点で整理するとよいだろう。グローバルマネジメントとは、すなわちグローバルリスクマネジメントである、といつもクライアントに申し上げるのだが、グローバリゼーションが進む中での企業経営において、リスクは重要なファクターになっている。

 昨今は、リーマンショックをはじめとした金融危機、政治不安や紛争、気候変動などを代表例にしたリスクが目立つが、World Economic Forum 2014の「Global Risk Landscape」では、それらに加え、格差の拡大、パンデミック、サイバーテロまで、実にさまざまなリスクが指摘されている。もちろん、マクロ経済的リスクや不正、コンプライアンスといった基礎的なリスクも存在する。一企業の力がほとんど及ばないレベルのリスクには、受身の対応にならざるを得ないものの、多様なリスク、それも複雑に絡み合い、神出鬼没に顕在化する「かもしれない」ことを想定し、備えておかなければならないことが、経営をいっそう複雑にしているといえる。

意志を持ってCxO機能をデザインする

 このようなグローバリゼーションの潮流の中での企業行動の進展が、CxOのあり方に進化を求めてきた。例えば、さまざまな拡大を見せる企業組織をより効果的に運営していくために、CxOは、企業組織と市場の地理的な拡大と事業の拡大による所掌範囲(span of control)の広がりに対して、優秀なゼネラルマネジャーとして企業をリードするとともに、機能を細分化することで対応していくこととなった。また、複雑性への対応は、20世紀最終盤から急激に重要性を増しており、CxOにマネジメント上の新たな挑戦を求めている。

 多くは単一型から始まる企業組織は、アルフレッド・D・チャンドラー Jr.の著書でも考察された機能別、事業別組織、ジョン・M・ストップフォードとルイス・T・ウェルズが提唱した(グローバル・)マトリックス組織、昨今ではテクノロジーの進化が可能にするネットワーク型組織へと、彼らが置かれた環境に対応する形で変化を見せ、また、統括する本社のあり方も、例えば、マイケル・グードやアンドリュー・キャンペルのペアレンティング・スタイルにあるStrategic Control、Strategic Planning、Financial Controlの3つの型に分類され、語られてきた。

 このような組織論の根本的なコンセプト自体が廃れることはないのだが、現在はそれらが整理された時代よりも、企業活動の拡大と複雑性の高まりが絡んで、現実の組織運営はかなり難易度を増している。したがって、企業体をリードする経営機能としてのCxOのあり方について、成り行き的かつ形式的に欧米発の考えを取り入れるのではなく、日本企業が意志を持ってそのデザインをしないと、グローバル企業としての経営は成立しないし、すでに大きく水を開けられている状況を脱することはないだろう。

 今回、時間軸をたどって展開してきたが、新興国企業はもちろん、米系の主要企業の中にも第2次グローバリゼーションの終盤に誕生した企業が多く、彼らからすれば、今の環境が全てなのであり、何を当たり前なことを、というレベルの議論に過ぎないだろう。
 一方、日本には、戦前・戦後からの長寿企業が多く、かつ一時期は比較的安定した環境下である種の大成功を収めたため、変わることは難しいのかもしれない。しかし、不可能ではない。なぜなら、米系欧系問わず、確かな変わり身を遂げた伝統的な企業が、世界をリードするグローバル企業として存在しているのだから。

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次回は、CxOデザインについて、進化してきたCxOのあり方を3つの段階で考える。