規模の視点
~地理的な拡大から多軸の拡大へ

 このようなグローバリゼーションの変遷の中で、企業の変容はどのように進んだのだろうか。

 すべての企業が一様ではないが、企業の姿を大局的な時間軸で捉えれば、「規模の拡大」と「複雑性の高まり」の歴史といえる。両者は完全に同一線上のものではないが、まずは規模の拡大を追ってみたい。

 第1次グローバリゼーションからやや遡るが、18世紀後半の産業革命以後、大規模な工場を持つ企業が誕生した。この時点では各国内の需要が中心であったが、他方で企業組織が国境をまたいで活動する「多国籍企業」の存在もあった。多国籍企業は17世紀の東インド会社に始まるというのが定説だが、本格化するのは第1次グローバリゼーション時代である。1907年に英国とオランダの複合国籍を持つロイヤル・ダッチ-シェルが誕生するなど、欧州内での多国籍化がこの動きを先導した。

 第2次大戦後の第2次グローバリゼーションは市場拡大期である。米国と欧州の隔たりは小さくなり、当時の「新興国」日本の急成長も相まって市場は拡大を続けた。今振り返れば、絶妙な(奇跡的な)バランスによってもたらされた比較的安定した環境もそれに拍車をかけた。そのバランスを支えていた大きな要因の1つが冷戦構造であり、これが崩壊した後には「鉄のカーテン」の向こう側にあった国々と、20世紀最終盤からは人口急増のアジア圏新興国がそれぞれ加わり、新たな市場への供給を急いだ企業の規模はさらに拡大する。

 ラストフロンティアといわれるアフリカを含め、このような地理的な広がりが飽和へと向かう現在、置かれている事業環境により各社各様であるが、事業の多角化やコア事業の入れ換え、製品からサービス・ソリューションの領域への転換やバリューチェーンの垂直「再」統合、そしてそれを実行する1つの手段としてのM&Aが盛んに行われるなど、地理的な軸だけではない多軸的な拡大が進んでいる。このような動きは、ここ20年あまりに顕著である。

複雑性の視点
~市場・組織・環境の複雑さの高まり

 次に、複雑性に視点を移そう。複雑さの高まりは、やはり地理的な広がりをはじめとする規模の拡大の影響を多分に受ける。特に第2次グローバリゼーション後期の市場と組織の広がりによるところが大きい。

 国内から周辺国、大陸をまたいだ先進国、新興国へと展開する地域が広がり、求められる製品やサービスも多岐に渡るようになった。このニーズへの応え方は、ローカライズ、マスカスタマイズ、そして、ハイパーコネクティビティ(正確にはその一部であるモバイル、IoT、データアナリティクス等が可能にする個別化)を背景とした個人レベルでのカスタマイズと種々あるが、多くの企業では、大なり小なり、ニーズに対応して製品やサービスのバリエーションを増やしており、ビジネスの複雑性を高めている。